�� 間質性肺炎の急性増悪とは

原因・症状・治療法、そして家族ができるサポートまで
はじめに
間質性肺炎は、肺の「間質」と呼ばれる部分に慢性的な炎症や線維化が起こり
、呼吸機能が徐々に低下する病気です。
この長い経過のなかで、ある日突然、病状が急激に悪化することがあります。
それが「急性増悪」です。
急性増悪は命にかかわる深刻な状態で、患者さんだけでなく、ご家族や医療ス
タッフにとっても大きな負担になります。
この記事では、急性増悪の原因や症状、治療法、そしてご家族ができるサポー
トや心構えまで、わかりやすくお伝えします。
不安な気持ちを少しでも軽くし、安心して医療と向き合えるよう、正しい知識
と具体的なヒントをお届けします。
急性増悪の基本
結論からお伝えします。
急性増悪は予測が難しく、数日から数週間のうちに重い呼吸不全に進むことが
多いです。
治療が遅れると、死亡率が高くなってしまいます。
そのため、日ごろから患者さんの状態をよく観察し、異変を感じたらすぐに主
治医に相談することが、最も現実的で大切な対応です。
急性増悪のサイン
次のような症状が見られたら、迷わず医療機関を受診してください。
 いつもより息切れが強い
 安静にしていても呼吸が苦しい
 咳がひどくなった
 微熱や風邪のような症状が続く
記事のゴール
この記事の目的は、急性増悪の概要とその対応法、家族ができるサポートまで
知っていただき、不安を少しでも軽くすることです。
専門用語もできるだけ平易に説明しますので、最後までお読みくださいね。
�� 間質性肺炎の急性増悪とは?
定義と診断基準
急性増悪とは、「原因が特定できない急性の呼吸状態悪化」のことです。
慢性的な経過をたどる患者さんが、数週間以内に呼吸困難や低酸素血症を起こ
し、胸部CTで新しい影が見られます。
診断のポイントは次の通りです:
 既に間質性肺炎と診断されている
 数週間以内に急な呼吸困難が出現

 胸部CTで新たな両側のすりガラス影や浸潤影
 心不全・肺塞栓・感染症など他の原因が除外される
発症頻度とリスク因子
急性増悪は、患者さん全体の5〜15%に発生するとされ、特に特発性肺線維症
(IPF)では年間5〜10%の頻度です。
重症の場合、数週間で命を落とすこともあります。
リスク因子としては:
 高齢
 男性
 低い肺活量(進行期の線維化)
 喫煙歴
 過去に急性増悪を経験している
 感染症や手術、気管支鏡検査
高齢者や進行期の患者さんでは、軽い風邪やストレスでも引き金になることが
あります。
�� 急性増悪の原因とメカニズム
引き金となり得るもの
急性増悪の原因は明確にわからないことが多いですが、以下の要因が関わると
考えられています:
 呼吸器感染(ウイルス・細菌・インフルエンザ・新型コロナ)
 外科手術や麻酔
 診断目的の検査(気管支鏡・肺生検)
 胃食道逆流による微小誤嚥
 ストレスや過労、軽微な刺激
病態の仮説
近年は以下のメカニズムが提唱されています:
 ARDSのような急性肺障害
 自己免疫の過剰な活性化
 酸化ストレスや線維芽細胞の暴走
これらが、傷つきやすい肺にさらに炎症を引き起こし、致命的な呼吸不全を招
くと考えられています。
�� 症状と経過の特徴
急性期に現れる症状
急性増悪は、数日から1週間ほどで急速に悪化します。
特徴的な症状は:
 安静時にも強い息苦しさ
 ひどくなる乾いた咳

 頻呼吸(速く浅い呼吸)
 唇や爪のチアノーゼ(青紫色)
 微熱や強い倦怠感
感染症と区別がつきにくいこともあります。
「なんだか様子が違う」と感じたら、迷わず受診を。
経過のパターン
急性増悪は次のような経過をたどります:
 急性呼吸不全に進み、ICUで管理が必要
 治療に反応して一時的に改善するが再発のリスクあり
 重症の場合、数週間以内に亡くなる
家族が患者さんの変化に早く気づくことが重要です。
�� 治療法の選択肢
ステロイド療法
急性期の柱は、高用量ステロイドで炎症を抑えることです。
メチルプレドニゾロンのパルス療法が一般的で、その後減量しながら継続しま
す。
免疫抑制剤
重症例やステロイドが効きにくい場合に検討されます:
 シクロホスファミド
 シクロスポリンA
 タクロリムス
呼吸管理
酸素投与や、必要に応じて以下の管理が行われます:
 高流量鼻カニューレ(HFNC)
 非侵襲的陽圧換気(NPPV)
 人工呼吸管理、場合によってはECMO
完全に治せる治療法はまだ確立されていませんが、早期介入が重要です。
�� 予後と現実
生存率のデータ
特発性肺線維症(IPF)の場合、急性増悪後の院内死亡率は50〜70%とされてい
ます。
回復した場合でも、1年以内に再発や呼吸機能の悪化が起きることがあります

家族が知っておくべき現実
厳しい見通しであることを理解しつつ、延命治療や生活の質についても主治医
と話し合うことが大切です。

�� 家族ができること
急性増悪時の対応
 呼吸が苦しそうならすぐに病院へ連絡
 迷わず救急搬送を手配
 普段の薬や診断書を持参
退院後のケア
 感染予防(手洗い・マスク・ワクチン)
 部屋の清潔・湿度管理
 栄養バランスのとれた食事
 無理をしない生活
医療者とのコミュニケーション
 不安や疑問は遠慮せず相談
 将来の治療方針や延命の希望について話し合う
 看護師やソーシャルワーカーも頼る
�� まとめ
間質性肺炎の急性増悪は予測が難しく、厳しい経過をたどることが多い病態で
す。
しかし、正しい知識を持ち、早期に気づいて対応することで回復のチャンスが
生まれます。
家族の見守りや医療者との連携が、患者さんの安心とQOLの向上につながりま
す。
悲観しすぎず、現実を受け止めながら前向きに向き合いましょう。
✅ 次の一歩
 主治医に「急性増悪のサイン」について確認する
 家族間で情報を共有し、異変時の対応を決めておく
 感染予防と体調管理を徹底する
 必要なら相談窓口や支援制度を利用する
�� 小さな準備が、大きな違いを生みます。
あなたとご家族が、安心して医療に向き合えるよう願っています。

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