血糖値と深く関係する「眠りの質」
今すぐできる睡眠改善のすすめ
こんにちは。
医療法人煌仁会 森川内科クリニック院長の森川髙司です。
「ちゃんと頑張っているのに、なぜか血糖値が安定しない…」
「先生、食事も気をつけているし、薬もきちんと飲んでいるのに、どうしても血糖値が安定しないんです」
そんな悩みを抱える患者さんに、私はよくこう尋ねます。
「最近、よく眠れていますか?」
「えっ、睡眠が血糖値に関係あるんですか?」
——驚かれる方も多いですが、実は睡眠と血糖値の関係は非常に深く、密接なのです。
なぜ睡眠不足で血糖値が上がるのか? 3つのメカニズム
1. ストレスホルモン「コルチゾール」の増加
睡眠不足が続くと、体はストレス状態と判断し、コルチゾールというホルモンを多く分泌します。
このホルモンは血糖値を上げる働きがあり、結果として高血糖を引き起こす原因に。
2. インスリンの働きが鈍る(インスリン抵抗性)
寝不足は、インスリンに対する体の感受性を低下させます。
つまり、同じ量のインスリンでも血糖値を下げる力が弱まるということ。これが“インスリン抵抗性”です。
3. 食欲ホルモンのバランスが崩れる
睡眠不足により、「食欲を増やすホルモン(グレリン)」が増え、「満腹感を伝えるホルモン(レプチン)」が減少。
結果として、食べすぎや間食につながりやすくなるのです。
ある患者さんは、「夜更かしした翌朝、いつもより多く朝食を食べてしまう」と話されましたが、それもまさにホルモンバランスの乱れが原因でした。
【実例紹介】たった3ヶ月の睡眠改善で、HbA1cが大きく改善!
60代の男性患者さんのケースです。
HbA1cは8.5%と高く、食事療法・薬物療法を行っていたにもかかわらず、数値はなかなか下がりませんでした。
詳しく伺うと、仕事のストレスで深夜2時ごろまで起きていることが多く、平均4〜5時間の睡眠しかとれていない状態でした。
そこで、血糖管理と並行して「睡眠の質」を見直す取り組みを始めました。
📊 3ヶ月後の変化:
- HbA1c:8.5% → 7.1%
- 朝の血糖値:180mg/dl → 130mg/dl
- ご本人の感想:「朝の目覚めが明らかに違う。頭もスッキリしている感じがします」
睡眠時間を6〜7時間に確保し、生活リズムを整えただけで、ここまで血糖値が改善されたのです。
私がおすすめする「ぐっすり眠るための5つの習慣」
1. 就寝1時間前の“デジタルデトックス”
スマートフォン、パソコン、テレビなどの画面は、眠りを妨げるブルーライトを発しています。
寝る1時間前からは画面を見ないようにしましょう。
「最初は退屈でしたが、読書を始めたら自然と眠くなるようになった」という患者さんもいらっしゃいます。
2. 快適な寝室環境を整える
理想的な寝室環境の目安は以下の通りです:
- 温度:18〜22度
- 湿度:50〜60%
- 照明:できるだけ暗く(遮光カーテン推奨)
- 音:静かな環境(耳栓も効果的)
私自身も、寝室の温度と照明には特に気を配っています。
環境を整えるだけで、眠りの質は格段に変わります。
3. 「3-3-3ルール」を試してみる
眠りに入りやすくするための習慣として、以下の3つを意識してみてください:
- 就寝3時間前までに夕食を終える
- 就寝3時間前からカフェインを控える
- 就寝30分前からはリラックスタイムに切り替える
このルールを守るだけで、眠りの質がぐっと高まります。
4. 就寝・起床時間を固定する
毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる。
この“リズム”が、質の高い睡眠をつくる一番の近道です。
「休日の寝だめ」は、かえって体内時計を乱してしまいます。
平日と休日の差は1時間以内にとどめるのが理想です。
5. 適度な運動を日中に取り入れる
運動によって、**深いノンレム睡眠(熟睡)**が促されます。
激しい運動は就寝3時間前までに済ませましょう。軽めの運動なら、夕食後でもOK。
ある患者さんは、「夕食後に30分の散歩を取り入れたら、よく眠れるようになった」と話してくださいました。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)にも注意を
糖尿病患者さんの中には、**睡眠時無呼吸症候群(SAS)**を併発しているケースも少なくありません。
以下のような症状に心当たりはありませんか?
- 大きないびきをかく
- 夜中に何度も目が覚める
- 朝起きた時に頭痛や口の渇きがある
- 日中、強い眠気に襲われることがある
これらはSASのサインかもしれません。
この疾患は、血糖コントロールを著しく悪化させる原因にもなります。気になる症状があれば、必ずご相談ください。
ストレスとの向き合い方も、眠りのカギ
ストレスは睡眠の大敵。
以下のような簡単にできるストレスケアを、日常に取り入れてみてください。
- ゆっくりと深呼吸(4秒吸って、6秒吐く)
- 肩回しや軽いストレッチ
- 好きな音楽を聴く
- ぬるめのお風呂にゆっくり浸かる
私も診察の合間に深呼吸を意識することで、心と頭がスッと落ち着くのを感じています。
睡眠薬との“上手な付き合い方”
「睡眠薬に頼るのは避けたい」と不安に感じる方も多いかと思います。
もちろん、まずは生活習慣の改善が第一ですが、それでも眠れない場合は、医師の管理のもとで適切な薬を使うことも一つの選択肢です。
糖尿病と相性の良い薬や、依存性の少ない薬もありますので、不安なことがあれば遠慮なくご相談ください。
睡眠の“見える化”をしてみましょう
睡眠の質を客観的に把握するために、**「睡眠日記」**をおすすめしています。
✍ 記録してほしい項目
- 就寝・起床時間
- 眠りに落ちるまでの時間
- 夜中に起きた回数
- 朝の血糖値
- 起床時の気分(5段階で)
この日記をつけることで、自分自身の睡眠パターンと血糖値の関係性が“見える化”され、改善のヒントが見つかります。
家族と一緒に、よい睡眠環境を
良い眠りは、家族の協力なくしては築けません。
例えば、
- 就寝時間に合わせて、テレビや家電の音を控える
- 寝室を“睡眠専用の空間”に整える
- 家族全体で早寝早起きのリズムをつくる
ある患者さんのご家族は、患者さんの睡眠改善のために、家族全員の生活リズムを調整してくださいました。
その結果、患者さんだけでなく、ご家族全員の健康状態も改善したという嬉しい報告もありました。
良い睡眠がもたらすもの——血糖値の改善、その先にある人生の質
質の高い睡眠は、血糖値の安定だけでなく、
集中力の向上・免疫力のアップ・気分の安定など、人生を豊かにする多くのメリットをもたらします。
「よく眠れるようになってから、仕事の効率も上がり、家族との時間も心から楽しめるようになった」
——そんな声をいただくたび、改めて「眠り」の持つ力に驚かされます。
あなたに合った“現実的な”睡眠改善策をご提案します
夜勤がある方、小さなお子さんがいる方、介護中のご家族がいる方——
睡眠の悩みは人それぞれです。
当クリニックでは、生活スタイルに寄り添った現実的かつ実践的な改善法をご提案します。
必要に応じて、睡眠専門医との連携も可能です。
どんな小さなことでも構いません。
睡眠について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。
血糖値のことと同じくらい、「眠りの質」についても一緒に考えていきましょう。
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よい眠りから、安定した血糖値と豊かな毎日を。
その第一歩を、私たちと一緒に踏み出してみませんか?

