⑦睡眠時無呼吸症候群
放置するとどうなる?知られざる合併症リスク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、「眠っている間に呼吸が止まる」という一見ささいな症状から始まります。
しかし放置すれば、脳や心臓、代謝系にまで悪影響を及ぼし、命に関わる深刻な合併症を招く可能性があります。
無呼吸による慢性的な酸素不足が全身の臓器を蝕むからです。
1. 高血圧・心臓病
無呼吸が起こるたびに、脳は「危険信号」を発して交感神経を活性化します。
その繰り返しが慢性化すると、血圧が常に高い状態となり、夜間高血圧や早朝高血圧の原因になります。
さらにリスクが高まるのは:
- 心筋梗塞
- 心不全
- 不整脈(特に心房細動)
いずれも突然死につながる可能性がある疾患です。
実際に、SAS患者は非患者に比べて心血管系による死亡率が明らかに高いと報告されています。
2. 脳卒中・脳血管障害
酸素欠乏と高血圧の影響で、脳梗塞や脳出血のリスクが大幅に上昇します。
特に夜間は脳血流が不安定になるため、睡眠中に脳卒中を起こすケースも少なくありません。
朝目覚めなかった」という事態を避けるためにも、早期対策が欠かせません。
3. 糖尿病との関連
SASはインスリン抵抗性を高め、2型糖尿病の発症リスクを押し上げます。
すでに糖尿病を持つ人では血糖コントロールが悪化し、網膜症や腎症など合併症の進行が加速する危険もあります。
4. うつ症状・認知機能の低下
慢性的な睡眠不足は脳の神経伝達物質に影響を与え、精神面や認知機能にも悪影響を及ぼします。
代表的な症状は:
- 抑うつや気分の落ち込み
- 感情の不安定さ
- 記憶力・判断力の低下
- 集中力の欠如
これらは仕事のパフォーマンス低下や人間関係の悪化にもつながり、生活全体の質を下げてしまいます。
5. 交通事故・労働災害
日中の強烈な眠気は、運転中や作業中に突然の「居眠り事故」を引き起こします。
特に長距離ドライバーや重機作業に従事する人にとっては致命的なリスクです。
👉 実際に、SAS患者の交通事故率は健常者の2〜7倍と報告されています。
本人に自覚がなくても、社会全体に影響を及ぼす深刻な問題です。
治療すればリスクは下げられる
恐ろしい合併症も、適切な診断と治療によって大幅にリスクを軽減できます。
CPAP療法やマウスピース治療を継続すれば、血圧や血糖の安定化が期待でき、心血管イベントの予防にもつながります。
逆に、治療を怠れば無呼吸は進行し、合併症が「静かに」積み重なっていきます。
放置か、治療か──選択は健康と命を左右します。