家族が糖尿病になったときに知っておきたいこと
〜支える人にできる具体的なサポートとは〜
こんにちは。医療法人煌仁会 森川内科クリニック院長の森川髙司です。
「夫が糖尿病と診断されて、何をしてあげたらいいのか分からない」
「母の血糖値が高く、家族としてどう関われば良いのか不安」
「子どもの食事管理を、どこまで気をつけるべき?」
こうしたお悩みは、診察室でも日々寄せられるご相談のひとつです。
糖尿病の診断は、ご本人だけでなく、そのご家族にとっても大きな出来事です。特に、どうサポートすればよいのか分からず、戸惑ってしまう方も多いのではないでしょうか。
本日は、「家族としてできるサポートとは何か?」をテーマに、分かりやすくお伝えします。
糖尿病は“家族で向き合う病気”
糖尿病は、患者さんだけの問題ではありません。食事・運動・生活習慣など、日常のあらゆる場面で、家族の関わりが必要になります。
患者さんが一人で頑張るよりも、家族の理解と協力があることで、血糖コントロールは大きく改善される傾向にあります。
一方で、心配しすぎも逆効果
「怖い病気」としての印象が強い糖尿病ですが、きちんと治療と生活習慣の改善を行えば、十分に健康で元気に過ごすことができます。
ご家族が過度に不安になってしまうと、その緊張が患者さんにも伝わり、ストレスが増えてしまうこともあります。まずは落ち着いて、できることから始めましょう。
家族ができる「5つのサポート」
1. まずは病気を正しく理解する
家族としての第一歩は、糖尿病についての正しい知識を持つことです。
理解しておくと良いポイント:
- 糖尿病の種類(1型・2型など)とその違い
- 血糖値やHbA1cの意味
- 治療の基本(食事・運動・薬)
- 合併症のリスクと予防
ご家族にも一緒に診察に同席いただき、治療方針や注意点をお伝えする機会を設けています。あるご夫婦では、奥様が診察に参加するようになってから、食事や生活習慣の改善がスムーズに進んだというケースもあります。
2. 食事は“みんなで取り組む”のが基本
糖尿病の食事療法は、患者さん一人だけが頑張るのではなく、家族全体で健康的な食習慣を意識することが大切です。
家族としてできること:
- 患者さん用の特別食ではなく、全員でバランスの良い食事を心がける
- 間食や外食のときも、さりげなくサポートする
- 「ダメ」「我慢して」といった言葉より、「こうすると一緒に楽しめるね」と工夫を共有する
3. 運動を“一緒に楽しむ”ことから始めましょう
無理のない運動は、血糖コントロールにとても効果的です。
家族と一緒にできる運動の例:
- 毎日15〜30分の散歩
- 一緒に家事や買い物へ行く
- 家の中でできる軽いストレッチ
あるご夫婦は、朝の散歩を日課にしたことで、お互いの健康管理にもなり、会話の時間も増えたと話してくださいました。
4. 気持ちに寄り添い、焦らず応援する
糖尿病と診断されると、ご本人は不安やショックで心が不安定になることもあります。
ご家族ができる精神的な支え方:
- どんな小さな変化も一緒に喜ぶ
- 血糖値が高い日があっても責めない
- 治療を「一緒に頑張っていこう」と前向きに声をかける
“責める”より“寄り添う”。これが、継続的な治療には何より大切です。
5. 通院・お薬管理をさりげなくサポート
通院や薬の管理も、治療には欠かせません。
サポート例:
- 病院に付き添う(特に初期段階)
- お薬の飲み忘れを優しくフォロー
- 血糖値や検査結果を一緒に記録する
特に高齢の患者さんやお子様の場合、ご家族の協力が治療の安定に直結します。
家族の立場によって変わるサポートの形
◎配偶者の場合:
- 毎日の生活を共にするパートナーとして、最も大きな存在です。
- 食事・運動・気持ちのフォローまで、自然に寄り添える立場です。
◎子どもが患者の場合:
- 学校生活との両立や、思春期特有の心のケアが必要。
- 無理に管理しすぎず、成長を見守る姿勢も大切です。
◎親が患者の場合:
- 自立を尊重しながら、必要な時にしっかり支えるスタンスを。
- 孫世代との関わりも意識した生活習慣の提案が効果的です。
家族全員で取り組んだ成功事例
ケース1:60代ご夫婦の場合
取り組み内容: 一緒に料理教室に通い、毎朝の散歩を習慣に。
結果: ご主人のHbA1cが8.1%→6.9%へ改善し、奥様も5kg減量に成功。
「健康になれたうえに、夫婦の会話も増えて嬉しいです」との声も。
ケース2:40代の父と家族
取り組み内容: 家族で休日にハイキング。子どもと一緒に糖尿病を学ぶ時間を確保。
結果: 食事も運動も自然に改善し、家族みんなが健康に。
家族がついやってしまう「3つの落とし穴」
- 過干渉になること
→自立を大切にし、見守る姿勢がポイントです。 - 完璧を求めすぎること
→“今日は頑張ったね”という声かけが継続のカギに。 - 自分(支える側)が疲れてしまうこと
→無理をせず、専門家やサービスの力を借りてください。
緊急時の対応も、家族で共有を
◎低血糖時
症状: 手の震え、汗、ぼんやりする
対処法: ブドウ糖・飴・ジュースなどをすぐに摂取
◎高血糖時
症状: 喉の渇き、倦怠感、トイレが近い
対処法: 水分補給・速やかな受診(意識障害がある場合は救急要請)
ご家族へのメッセージ
完璧な家族を目指す必要はありません
大切なのは「支えたい」という気持ちそのものです。
一緒に学び、一緒に進んでいきましょう
糖尿病の治療は“マラソン”のようなもの。ゆっくりでも、確実に進んでいけば必ず成果は現れます。
ご家族の健康も、私たちは大切にしています
支える人こそ、心と体を健やかに保つことが必要です。疲れた時、不安な時には、遠慮なくご相談ください。
医療チームとの連携も活用を
- 家族面談の実施
→必要に応じて、ご家族だけの面談も可能です。 - 栄養指導への参加
→管理栄養士が、家庭の食事作りをサポートします。 - 24時間対応の安心体制
→ご家族からの連絡も、いつでも受け付けています。
最後に:家族の力は、治療の力
30年の診療の中で、私は何度も「家族の支えが患者さんの治療を前向きに変える瞬間」を見てきました。
糖尿病は、決して“ひとりで闘う病気”ではありません。
家族がそばにいる。それが、患者さんにとって最大の安心となり、希望になります。
小さなことでも、何か気になることがあればご相談ください。
私たちは、ご本人だけでなく、ご家族のサポートにも全力を尽くします。
まずはお気軽にご相談ください。
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ご家族みんなで健康と安心を手に入れる。
その第一歩を、私たちと一緒に踏み出しましょう。

