“未来を守る医療ノート” 【シリーズ第4回】

ストレスは万病の元?働くあなたのためのストレス対処法

医療法人煌仁会森川内科クリニック 理事長 森川髙司


「ストレスで胃が痛い」 「ストレスで眠れない」 「ストレスで血圧が上がった」

ストレスと健康の関係、何となく理解していても、実際にどれほど深刻か、知っていますか?

ストレスは、あなたの体を確実に蝕んでいます。

Kさんの話

Kさん(当時39歳、男性)は、営業部のマネージャーでした。

部下の管理、ノルマ、クレーム対応。毎日がストレスの連続でした。

最初は、胃の不快感から始まりました。次第に、眠れなくなり、頭痛、めまい。朝起きるのが辛い。仕事に集中できない。

「疲れているだけ」と思って我慢していましたが、ある日、会社で倒れました。

診断は、急性胃潰瘍適応障害

入院し、仕事を1ヶ月休むことになりました。

「ストレスを甘く見ていた」

Kさんは、今、ストレスとの付き合い方を学び、復職されています。

ストレスが体に与える影響

ストレスは、心だけでなく、体にも深刻な影響を与えます。

1. 自律神経の乱れ

ストレス → 交感神経が優位に →

  • 血圧上昇
  • 心拍数増加
  • 胃腸の働き低下
  • 免疫力低下
  • 睡眠障害

2. ホルモンバランスの乱れ

ストレスホルモン(コルチゾール)の増加 →

  • 血糖値上昇
  • 内臓脂肪の蓄積
  • 骨密度低下
  • 筋肉の分解

3. 免疫力の低下

  • 風邪をひきやすい
  • 感染症にかかりやすい
  • がんのリスク上昇(長期的には)

4. 炎症の増加

  • 動脈硬化の進行
  • 心筋梗塞、脳梗塞のリスク上昇

ストレスが引き起こす病気

消化器系:

  • 胃潰瘍、十二指腸潰瘍
  • 過敏性腸症候群(IBS)
  • 機能性ディスペプシア

循環器系:

  • 高血圧
  • 心筋梗塞
  • 狭心症
  • 不整脈

精神・神経系:

  • うつ病
  • 不安障害
  • パニック障害
  • 適応障害
  • 不眠症
  • 頭痛(緊張型頭痛、片頭痛)

その他:

  • メタボリックシンドローム
  • 糖尿病の悪化
  • 円形脱毛症
  • 帯状疱疹
  • アトピー性皮膚炎の悪化

ストレスのサイン、見逃していませんか?

ストレスは、様々な形で体や心にサインを出します。

体のサイン:

  • 胃の痛み、不快感
  • 頭痛
  • 肩こり、首のこり
  • めまい、ふらつき
  • 動悸
  • 息苦しさ
  • 疲れやすい
  • 食欲不振、または過食
  • 下痢、便秘

心のサイン:

  • イライラする
  • 不安感
  • 集中できない
  • やる気が出ない
  • 何をしても楽しくない
  • 眠れない、途中で目が覚める
  • 朝起きるのが辛い

行動のサイン:

  • 飲酒量が増えた
  • タバコの本数が増えた
  • 遅刻、欠勤が増えた
  • ミスが増えた
  • 人と会いたくない

3つ以上当てはまったら、要注意です。

ストレスとの「上手な付き合い方」

ストレスをゼロにすることは不可能です。でも、「上手に付き合う」ことはできます。

1. ストレスの「見える化」

まず、自分のストレスを「見える化」しましょう。

ストレス日記をつける:

  • いつ、何で、どのくらいストレスを感じたか
  • その時の体の反応、心の反応

パターンが見えてきます。

  • 特定の人、状況でストレスを感じる
  • 特定の時間帯で症状が出る

パターンが分かれば、対策が立てられます。


2. 「コントロールできること」に集中

ストレスには、2種類あります。

コントロールできるストレス:

  • 自分の行動、考え方
  • 時間の使い方
  • 生活習慣

コントロールできないストレス:

  • 他人の行動、考え方
  • 会社の方針
  • 天気、交通渋滞

「コントロールできないこと」を悩んでも、ストレスは増すだけ。

「コントロールできること」に集中しましょう。


3. 「完璧主義」を手放す

完璧主義は、ストレスの大きな原因です。

  • 「100点でなくても、80点で十分」
  • 「失敗しても、次に活かせばいい」
  • 「人に頼ってもいい」

「ほどほど」を心がけましょう。


4. 「ノー」と言う勇気

何でも引き受けていませんか?

  • 自分のキャパシティを超えた仕事
  • 本当はやりたくないこと

「ノー」と言うことも、大切なスキルです。

「すみません、今、手一杯で…」 「別の方にお願いできませんか?」

断ることは、悪いことではありません。


5. 「リラックスタイム」を作る

1日の中で、意識的にリラックスする時間を作りましょう。

5分でもOK:

  • 深呼吸(腹式呼吸)
  • ストレッチ
  • 好きな音楽を聴く
  • 窓の外を見る
  • コーヒーを味わう

オンとオフの切り替えが大切です。


6. 運動する

運動は、最高のストレス解消法です。

効果:

  • ストレスホルモンが減少
  • 「幸せホルモン」(セロトニン)が増加
  • 睡眠の質が向上
  • 気分転換

おすすめ:

  • ウォーキング、ジョギング
  • 水泳
  • ヨガ
  • 筋トレ

1日30分、週3回以上。


7. 十分な睡眠

睡眠不足は、ストレス耐性を低下させます。

目標:7〜8時間

良い睡眠のために:

  • 寝る1時間前は、スマホ、PCを見ない
  • 寝室を暗く、静かに、涼しく
  • 寝る前のカフェイン、アルコールを避ける
  • 昼寝は15〜20分まで

8. 人に話す

一人で抱え込まないでください。

話す相手:

  • 家族、友人
  • 信頼できる同僚
  • 産業医、カウンセラー
  • かかりつけ医

話すだけで、気持ちが楽になります。


9. 趣味、楽しみを持つ

仕事以外の「楽しみ」を持っていますか?

  • 読書
  • 映画、音楽
  • スポーツ
  • 旅行
  • 料理
  • ガーデニング

「楽しい」と思える時間が、ストレスを和らげます。


10. マインドフルネス、瞑想

マインドフルネス: 「今、この瞬間」に意識を向ける

簡単な瞑想:

  1. 静かな場所で座る
  2. 目を閉じる
  3. 呼吸に意識を向ける
  4. 雑念が浮かんでも、また呼吸に戻る
  5. 5〜10分続ける

ストレス軽減、集中力向上の効果があります。


「こんな時は、すぐに専門医へ」

以下の症状があれば、専門医(心療内科、精神科)を受診してください。

  • 2週間以上、気分の落ち込みが続く
  • 何をしても楽しくない
  • 死にたいと思う
  • 眠れない日が続く(2週間以上)
  • 仕事に行けない
  • パニック発作(突然の動悸、息苦しさ、恐怖感)

「気の持ちよう」ではありません。医学的な治療が必要です。

会社でできるストレス対策

1. 休憩を取る

1時間に1回、5分でも席を立つ。

2. デスクでストレッチ

肩回し、首回し、背伸び。

3. ランチは外で

外の空気を吸う、日光を浴びる。

4. 優先順位をつける

「緊急かつ重要」「重要だが緊急でない」を区別。

5. 時間管理

ToDoリストを作る。終わったら消す達成感。

6. 同僚とのコミュニケーション

雑談、笑い。人間関係が良好だと、ストレスは減る。

「ストレス耐性」を高める

ストレスに強くなる方法もあります。

1. 物事の捉え方を変える(認知の変容)

ネガティブ: 「失敗した。自分はダメだ」 ポジティブ: 「失敗した。次はこうしよう」

ネガティブ: 「上司に怒られた。嫌われている」 ポジティブ: 「上司に指摘された。期待されている」

同じ出来事でも、捉え方次第でストレスは変わります。

2. 感謝の気持ち

毎日、3つ「良かったこと」「感謝すること」を書き出す。

ポジティブな思考が習慣になります。

3. 自己肯定感を高める

  • 小さな成功を認める
  • 自分を責めない
  • 自分を褒める

4. レジリエンス(回復力)を高める

  • 失敗しても、立ち直る力
  • 柔軟性
  • 前向きな思考

レジリエンスは、鍛えられます。

私からのメッセージ

ストレスのない人生は、ありません。

でも、ストレスに押しつぶされない生き方はあります。

  • ストレスを「見える化」する
  • コントロールできることに集中する
  • リラックスタイムを作る
  • 運動、睡眠、趣味
  • 人に話す
  • 必要なら、専門医に相談

あなたの心と体を守るのは、あなた自身です。

でも、一人で抱え込まないでください。私たちがいます。

次回は、「忙しくてもできる『5分間健康習慣』」についてお話しします。

あなたの未来を、一緒に守りましょう。


医療法人煌仁会森川内科クリニック 理事長 森川髙司

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