お酒を飲まない人でも脂肪肝になる?原因と対策を解説
「お酒はほとんど飲まないのに、脂肪肝と言われた」
「健康診断でASTやALTが高いと言われた」
「腹部エコーで脂肪肝を指摘されたけれど、症状はまったくない」
このような経験はありませんか?
脂肪肝というと、
「お酒をたくさん飲む人の病気」
というイメージを持っている方もいるかもしれません。
しかし実際には、お酒をほとんど飲まない方にも脂肪肝はみられます。
特に、体重増加や内臓脂肪、血糖値、血圧、脂質異常などの代謝異常と関連する脂肪肝は、現在**MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)**と呼ばれています。
私は兵庫県尼崎市・JR塚口駅近くで内科を診療している、森川内科クリニックの森川髙司です。
今回は、お酒を飲まない方にも起こる脂肪肝の原因、健康診断で指摘されたときに確認したいこと、検査や生活習慣の改善方法についてわかりやすく解説します。
脂肪肝とはどのような状態?
脂肪肝とは、簡単にいうと肝臓に脂肪が過剰にたまった状態です。
肝臓は、私たちの体の中で、
- 栄養素を代謝・貯蔵する
- アルコールや薬などさまざまな物質を代謝する
- 胆汁をつくる
- 体に必要なタンパク質などをつくる
といった重要な役割を担っています。
肝臓に脂肪がたまっていても、初期には自覚症状がほとんどないことが珍しくありません。
そのため、
「体調はいいから肝臓も問題ないだろう」
とは限らないのが脂肪肝の特徴です。
お酒を飲まなくても脂肪肝になる?
はい。
お酒を飲まない方や、飲酒量が少ない方でも脂肪肝になることがあります。
脂肪性肝疾患には、飲酒だけでなく、肥満や血糖、血圧、脂質などさまざまな要因が関係します。
近年は、肥満・糖尿病・脂質異常症・高血圧などの代謝異常と関連する脂肪性肝疾患を、
MASLD(マッスルディー:代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)
と呼びます。
以前は「非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)」という名称が広く使われていましたが、現在は疾患概念・名称が変更されています。
MASLDとは?
MASLDは、肝臓への脂肪蓄積に加えて、肥満や血糖、血圧、中性脂肪などの心血管・代謝系のリスク因子が関係する脂肪性肝疾患です。
例えば、
- 体重が増えてきた
- お腹まわりが大きくなった
- 血糖値やHbA1cが高い
- 糖尿病がある
- 血圧が高い
- 中性脂肪が高い
- HDLコレステロールが低い
といった状態と関連します。
そのため、
「お酒を飲まない=脂肪肝にはならない」
というわけではありません。
脂肪肝の主な原因・関連する要因
脂肪肝には一つだけではなく、さまざまな要因が関係します。
1. 食べ過ぎ・摂取エネルギーの過剰
摂取するエネルギーが消費するエネルギーを上回る状態が続くと、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されます。
その一部が肝臓に蓄積すると、脂肪肝につながります。
「脂っこいものだけ避ければ大丈夫」というわけではなく、食事全体の量やバランスを考えることが大切です。
2. 甘い飲み物・お菓子などのとり過ぎ
清涼飲料水、ジュース、加糖コーヒー、菓子類などを頻繁にとっている場合も注意が必要です。
糖質を必要以上にとり続けると、余ったエネルギーが脂肪として蓄積されやすくなります。
特に甘い飲み物は習慣的に摂取しやすいため、
「毎日飲んでいるものに糖分がどれくらい入っているか」
を一度確認してみるのもよいでしょう。
3. 体重増加・内臓脂肪
脂肪肝と関連が深いものの一つが、肥満や内臓脂肪です。
「若い頃と比べて体重が10kg増えた」
「体重はそれほど変わっていないけれど、お腹まわりが大きくなった」
という方は注意が必要です。
ただし、太っていなければ脂肪肝にならないわけではありません。
見た目では肥満が目立たない方でも脂肪肝がみられることがあります。
4. 運動不足
運動不足も、体重増加やインスリン抵抗性などを介して脂肪肝と関係します。
デスクワークが中心で、
「一日のほとんどを座って過ごしている」
「以前より歩かなくなった」
という場合には、日常生活の活動量を見直すことも大切です。
5. 糖尿病・高血圧・脂質異常症
脂肪肝は肝臓だけの問題として考えるのではなく、全身の代謝異常の一つとして捉えることが重要です。
特に、
- 2型糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
- 肥満
などが重なっている場合には、肝臓だけでなく心血管疾患などのリスクも含めて健康管理を考える必要があります。
「脂肪肝=食べ過ぎ」とは限りません
脂肪肝を指摘されたときに注意したいのが、
「太ったから脂肪肝になったのだろう」
と自己判断して終わらせてしまうことです。
肝臓に脂肪が蓄積する原因は、MASLDだけではありません。
飲酒に関連する肝疾患のほか、
- 薬剤
- ウイルス性肝炎などの肝疾患
- 特定の代謝性疾患
- その他の病気
が関係している場合があります。
脂肪肝や肝機能異常を指摘された場合には、背景に別の病気がないかを確認することも大切です。
脂肪肝は健康診断で見つかることが多い
脂肪肝は、自覚症状がほとんどないことが珍しくありません。
そのため、
健康診断で初めて指摘される方が多い病気です。
例えば、
- 腹部超音波(エコー)で脂肪肝を指摘された
- ALTが高かった
- ASTが高かった
- γ-GTPが高かった
などをきっかけに受診される方がいます。
AST・ALTが高ければ脂肪肝?
必ずしもそうではありません。
AST・ALTは、肝臓などの細胞が障害を受けたときに血液中で上昇することがある酵素です。
脂肪肝に伴って上昇することもありますが、
AST・ALTが高い=脂肪肝
とは限りません。
ウイルス性肝炎、アルコール、薬剤など、さまざまな原因で上昇することがあります。
反対に、脂肪肝があってもASTやALTが大きく上昇しない場合があります。
そのため、血液検査の一つの数値だけで判断しないことが大切です。
γ-GTPが高い=お酒の飲み過ぎ?
これも必ずしもそうではありません。
γ-GTPは飲酒によって上昇することがありますが、飲酒以外にも肝臓・胆道の病気や薬剤などの影響で上昇することがあります。
「お酒を飲まないのにγ-GTPが高い」
という場合もあります。
健康診断で異常を指摘された場合は、
「お酒を飲んでいないから大丈夫」
と放置せず、必要に応じて原因を確認しましょう。
脂肪肝は放置しても大丈夫?
脂肪肝といっても、その経過はすべて同じではありません。
生活習慣の改善などによって肝臓の脂肪が減少する方がいる一方、一部では肝臓に炎症や線維化が進行することがあります。
現在は、MASLDの中でも肝臓に炎症や肝細胞障害を伴う状態を、
MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)
と呼びます。
さらに線維化が進行すると、肝硬変などにつながる場合があります。
だからこそ重要なのは、
「脂肪肝があるか」だけではなく、「肝臓の線維化が進んでいないか」
を評価することです。
健康診断で脂肪肝を指摘されたら何を調べる?
実際に必要な検査は患者さんによって異なりますが、まず血液検査や腹部超音波検査などを組み合わせて評価します。
血液検査では、
- AST
- ALT
- γ-GTP
- 血小板
- 血糖値
- HbA1c
- 中性脂肪
- コレステロール
などを確認することがあります。
必要に応じて、ウイルス性肝炎など脂肪肝以外の肝疾患についても調べます。
腹部エコーでは何がわかる?
腹部超音波検査(腹部エコー)は、脂肪肝の評価に用いられる検査の一つです。
超音波を利用して、
- 肝臓の状態
- 脂肪肝を疑う所見
- 肝臓の形態
- 胆のう・胆管
- 腎臓など周囲の臓器
を観察できます。
放射線による被ばくがなく、身体への負担が比較的少ない検査です。
ただし、腹部エコーだけですべての肝疾患や線維化の程度がわかるわけではありません。
血液検査などと組み合わせて評価することが大切です。
肝臓の「線維化」を確認することも重要
脂肪肝の診療では、肝臓に脂肪があるかどうかだけではなく、
線維化がどの程度進んでいる可能性があるか
を評価することが重要です。
その方法の一つとして、年齢・AST・ALT・血小板数を使って計算するFIB-4 indexなどがあります。
FIB-4 indexは、肝臓の線維化リスクを評価するための指標の一つです。
ただし、FIB-4だけで肝硬変などを確定診断できるわけではありません。
必要に応じて追加検査や専門医への紹介を検討します。
脂肪肝は改善できる?
原因や進行度によりますが、MASLDでは生活習慣を見直すことが治療の重要な柱になります。
特に、
- 食生活を整える
- 適正な体重を目指す
- 運動習慣をつくる
- 糖尿病を適切に治療する
- 高血圧を管理する
- 脂質異常症を管理する
ことが大切です。
「脂肪を食べなければ治る」わけではありません
脂肪肝という名前から、
「脂っこい食事を全部やめればいい」
と思う方もいます。
しかし、食事で重要なのは脂質だけではありません。
総摂取エネルギーや、
- 主食
- 主菜
- 副菜
- 間食
- 甘い飲み物
- アルコール
などを含め、食生活全体を見直すことが大切です。
極端な食事制限をするよりも、続けられる方法を考えていきましょう。
まずは「少し動く」ことから
運動もMASLDの改善に重要です。
「毎日ジムに行かないと意味がない」
というわけではありません。
例えば、
- 少し速めに歩く
- 一駅分歩く
- エレベーターではなく階段を使う
- 座っている時間を減らす
- 食後に軽く歩く
など、日常生活の活動量を増やすことから始められます。
体力や持病によって適した運動量は異なるため、無理のない範囲で継続することが大切です。
体重を減らせば脂肪肝は改善する?
体重過多があるMASLDでは、減量によって肝臓の脂肪や炎症などの改善が期待できます。
ただし、
「○kg減らせば必ず治る」
というものではありません。
また、短期間で極端に体重を落とす必要もありません。
現在の体重、筋肉量、年齢、糖尿病などの持病を考慮しながら、無理なく継続できる目標を設定することが重要です。
痩せている人でも脂肪肝になる?
なります。
肥満は脂肪肝の重要なリスク因子ですが、
「BMIが正常だから脂肪肝にはならない」
とは限りません。
見た目では肥満が目立たなくても、内臓脂肪や糖代謝異常などを伴っている場合があります。
そのため、健康診断で脂肪肝を指摘された場合は、
「自分は痩せているから間違いだろう」
と考えず、一度確認することをおすすめします。
こんな場合は一度ご相談ください
次のような方は、一度医療機関で確認することをおすすめします。
- 健康診断で脂肪肝を指摘された
- AST・ALT・γ-GTPの異常が続いている
- 腹部エコーで脂肪肝と言われた
- 糖尿病がある
- 中性脂肪が高い
- 血圧が高い
- 最近体重や腹囲が増えてきた
- お酒を飲まないのに肝機能異常がある
- 家族に肝臓病の方がいる
症状がなくても、検査値の異常が続いている場合には確認することが大切です。
森川内科クリニックでできること
当クリニックでは、健康診断などで脂肪肝や肝機能異常を指摘された方のご相談を受け付けています。
必要に応じて、
- 血液検査
- 腹部超音波検査
- 糖尿病・脂質異常症などの評価
- 生活習慣の見直し
- 肝線維化リスクの評価
などを行います。
検査結果によって、より詳しい検査や専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な医療機関をご紹介します。
まとめ|お酒を飲まなくても脂肪肝になることがあります
脂肪肝について、大切なポイントを3つにまとめます。
1. お酒を飲まない方でも脂肪肝になることがあります。
特に肥満、血糖、血圧、中性脂肪などの代謝異常と関連する脂肪性肝疾患は、現在「MASLD」と呼ばれています。
2. 脂肪肝は症状がほとんどないことがあります。
健康診断の腹部エコーや血液検査をきっかけに見つかることも多く、「症状がないから大丈夫」とは限りません。
3. 大切なのは、原因と肝線維化のリスクを確認することです。
生活習慣の改善でよくなる可能性がありますが、一部では炎症や線維化が進行することがあります。健診で脂肪肝や肝機能異常を指摘されたら、一度確認しておきましょう。
「お酒を飲まないのに脂肪肝と言われた」
「ASTやALTが高いけれど、何が原因かわからない」
「腹部エコーで脂肪肝と言われた」
「何から生活習慣を変えればいいかわからない」
このような場合は、お気軽にご相談ください。
執筆者プロフィール
森川 髙司
医療法人煌仁会 森川内科クリニック 理事長
専門:内科・消化器内科・呼吸器内科
地域の皆様の健康寿命延伸のため、生活習慣病の予防・改善指導に力を入れています。

