自覚症状が少ない脂肪肝|放置しても大丈夫?
「脂肪肝と言われたけれど、体調は悪くない」
「痛みもないし、特に困っていないので様子を見ている」
「健康診断で毎年指摘されているけれど、数値もそれほど高くないから大丈夫だと思っている」
このような方は少なくありません。
脂肪肝の特徴の一つが、自覚症状がほとんどないことです。
そのため、健康診断で指摘されても、
「症状が出てから病院へ行けばいいかな」
と、そのままになってしまうことがあります。
しかし、脂肪肝は症状の有無だけでは状態を判断できません。
私は兵庫県尼崎市・JR塚口駅近くで内科を診療している、森川内科クリニックの森川髙司です。
今回は、脂肪肝を放置するとどうなるのか、どのような場合に注意が必要なのか、健康診断で指摘されたら何を確認すればよいのかについてわかりやすく解説します。
脂肪肝は「症状がない」ことが珍しくありません
脂肪肝とは、肝臓に脂肪が過剰にたまった状態です。
「肝臓に異常があれば、痛みやだるさが出るのでは?」
と思う方もいるでしょう。
しかし、脂肪肝の段階ではほとんど自覚症状がないことも珍しくありません。
そのため、
- 健康診断の血液検査
- 腹部超音波(エコー)検査
- 他の病気を調べるために受けた画像検査
などをきっかけに、偶然見つかることがあります。
つまり、
「症状がない=肝臓に問題がない」
とは限らないのです。
脂肪肝を放置するとどうなる?
脂肪肝があるからといって、すべての方で肝臓病が進行するわけではありません。
生活習慣の改善などによって肝臓の脂肪が減少する方もいます。
一方で、一部の方では肝臓に炎症や肝細胞の障害が起こり、時間をかけて肝線維化が進むことがあります。
肝線維化とは、肝臓の障害と修復が繰り返されることで、肝臓に線維成分が蓄積していく状態です。
さらに線維化が進行すると、肝硬変などにつながる場合があります。
だからこそ、
「脂肪肝があるかどうか」だけでなく、「線維化が進んでいる可能性がないか」を確認すること
が重要です。
「脂肪肝=将来必ず肝硬変」ではありません
脂肪肝を指摘されると、
「このまま肝硬変になってしまうのでは?」
と心配になる方もいます。
しかし、脂肪肝のある方すべてが肝硬変になるわけではありません。
進行しやすさは、
- 肝臓の炎症
- 線維化の程度
- 年齢
- 肥満
- 糖尿病
- 血圧
- 脂質異常
- 飲酒
- その他の肝疾患
など、さまざまな要因によって異なります。
大切なのは、脂肪肝という言葉だけで必要以上に心配することでも、症状がないから放置することでもありません。
自分の肝臓が現在どのような状態なのかを確認することが第一歩です。
MASLDとMASHとは?
近年、脂肪性肝疾患の名称や分類が変わっています。
肥満、血糖、血圧、脂質などの代謝異常と関連する脂肪性肝疾患は、
MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)
と呼ばれます。
以前「NAFLD(非アルコール性脂肪性肝疾患)」と呼ばれていた領域に代わって使われるようになった新しい名称です。
そして、MASLDの中でも肝臓に炎症や肝細胞障害を伴う病態は、
MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)
と呼ばれます。
脂肪肝を診療するときには、
「脂肪がたまっているか」だけではなく、「炎症や線維化が進んでいないか」
を考えることが大切です。
肝臓は症状だけでは状態がわかりにくい臓器です
肝臓には、
- 栄養素の代謝・貯蔵
- 体に必要なタンパク質などの合成
- 薬やアルコールなどさまざまな物質の代謝
- 胆汁の生成
など、多くの役割があります。
肝臓はある程度の障害があっても、初期には目立った症状が現れないことがあります。
そのため、
「お腹が痛くない」
「食欲もある」
「普通に仕事ができている」
ということだけで、肝臓の状態を判断することはできません。
AST・ALTが正常なら安心?
必ずしもそうとは限りません。
健康診断では、
- AST
- ALT
- γ-GTP
などの数値を確認することが多いと思います。
これらは肝臓の状態を評価するうえで大切な検査ですが、ASTやALTの値だけで脂肪肝の重症度や線維化の程度を判断することはできません。
脂肪肝があっても、ASTやALTが大きく上昇しない場合があります。
反対に、ASTやALTが高くても、その原因が脂肪肝とは限りません。
ウイルス性肝炎、飲酒、薬剤など、別の原因を確認する必要がある場合もあります。
脂肪肝で特に確認したい「肝線維化」
脂肪肝の経過を考えるうえで、重要なポイントの一つが肝線維化です。
線維化が進んでいる可能性がある場合には、より詳しい評価が必要になることがあります。
そこで使用される指標の一つが、
FIB-4 index(FIB-4インデックス)
です。
FIB-4 indexは、
- 年齢
- AST
- ALT
- 血小板数
から計算し、肝線維化のリスクを評価するために使用します。
採血結果から計算できるため、脂肪肝の患者さんの線維化リスクを評価する方法の一つとして利用されています。
ただし、FIB-4 indexだけで、
「肝硬変です」
「肝臓は正常です」
と確定できるものではありません。
年齢などの影響も受けるため、結果は他の検査と合わせて判断します。
腹部エコーでは何を調べる?
脂肪肝の評価では、腹部超音波検査(腹部エコー)が行われることがあります。
超音波を使って、
- 脂肪肝を疑う所見
- 肝臓の形や状態
- 胆のう
- 胆管
- 腎臓など周囲の臓器
を観察します。
放射線による被ばくがなく、体への負担が比較的少ない検査です。
ただし、腹部エコーだけで脂肪肝の原因や線維化の程度をすべて判断できるわけではありません。
血液検査などと組み合わせて評価します。
脂肪肝と生活習慣病には深い関係があります
脂肪肝を「肝臓だけの病気」と考えないことも大切です。
特にMASLDは、
- 肥満
- 2型糖尿病
- 高血圧
- 脂質異常症
などと深く関連します。
そのため、脂肪肝を指摘されたことをきっかけに血糖値や血圧、中性脂肪などを確認すると、別の生活習慣病が見つかることもあります。
反対に、
「糖尿病で通院しているけれど、肝臓については調べていない」
という方では、必要に応じて肝臓の状態を確認することも大切です。
肝臓だけでなく「全身」を考えることが大切
MASLDのある方では、肝臓病だけでなく、心血管疾患などにも注意する必要があります。
そのため、
「AST・ALTを正常にすることだけ」
を目標にするのではなく、
- 体重
- 腹囲
- 血糖
- HbA1c
- 血圧
- 中性脂肪
- コレステロール
- 運動習慣
- 食生活
- 飲酒習慣
などを含め、全身の健康状態を管理していくことが重要です。
脂肪肝は改善することがあります
脂肪肝を指摘されたからといって、
「もう肝臓は元に戻らない」
と考える必要はありません。
特に代謝異常と関連する脂肪肝では、食生活や運動、体重などを見直すことで、肝臓にたまった脂肪の減少が期待できる場合があります。
重要なのは、
無理なく続けられる方法を選ぶこと
です。
食生活は「極端に減らす」より「整える」
脂肪肝と言われると、
「炭水化物を全部やめよう」
「脂質を一切食べないようにしよう」
と極端な食事制限を始める方がいます。
しかし、大切なのは食生活全体を見直すことです。
例えば、
- 食べ過ぎを避ける
- 甘い飲み物を習慣にしない
- お菓子や夜食の量・頻度を見直す
- 野菜なども含めバランスよく食べる
- 飲酒量を確認する
など、続けられる改善を積み重ねます。
運動は「できるところから」で大丈夫
運動も脂肪肝の改善に重要です。
特別な運動だけでなく、
- 歩く時間を増やす
- 少し速めに歩く
- 階段を利用する
- 長時間座り続けない
- 食後に軽く体を動かす
など、日常生活の活動量を増やすことから始められます。
持病や関節の問題などがある場合は、無理をせず医師と相談しながら運動方法を考えましょう。
体重を少し減らすことにも意味があります
体重過多があるMASLDでは、減量によって肝臓の脂肪や炎症などの改善が期待できます。
ただし、
「短期間で一気に痩せる」
必要はありません。
急激で極端なダイエットよりも、食事と運動を見直しながら継続できる方法を考えることが大切です。
どのくらいの頻度で検査すればいい?
脂肪肝の経過観察の頻度は、すべての方で同じではありません。
- 肝機能検査の結果
- 線維化リスク
- 糖尿病などの基礎疾患
- 体重
- 飲酒状況
- 年齢
- その他の肝疾患の有無
などによって変わります。
そのため、
「脂肪肝なら全員○か月ごとに検査」
という一律のルールではなく、その方の状態に合わせて経過を確認します。
こんな場合は一度受診をおすすめします
特に次のような場合は、一度医療機関へ相談してください。
- 健康診断で脂肪肝を指摘された
- AST・ALT・γ-GTPの異常が続いている
- 毎年「要経過観察」と言われている
- 糖尿病がある
- 血圧が高い
- 中性脂肪が高い
- 最近体重や腹囲が増えた
- お酒を飲まないのに肝機能異常がある
- 脂肪肝を指摘されてから長期間検査をしていない
症状がなくても、一度現在の状態を確認しておくことが大切です。
森川内科クリニックでできること
森川内科クリニックでは、健康診断で脂肪肝や肝機能異常を指摘された方のご相談を受け付けています。
必要に応じて、
- 血液検査
- 腹部超音波検査
- 糖尿病・脂質異常症などの評価
- FIB-4 indexなどを用いた肝線維化リスクの評価
- 食事・運動など生活習慣の見直し
を行います。
また、より詳しい検査や専門的な治療が必要と判断した場合には、適切な医療機関をご紹介します。
まとめ|脂肪肝は「症状がないから大丈夫」とは限りません
脂肪肝について、大切なポイントを3つにまとめます。
1. 脂肪肝は自覚症状がほとんどないことがあります。
痛みや体調不良がなくても、健康診断や腹部エコーで脂肪肝が見つかることがあります。
2. すべての脂肪肝が進行するわけではありませんが、一部では肝線維化が進むことがあります。
大切なのは必要以上に怖がることではなく、線維化が進んでいる可能性がないかを確認することです。
3. 肝臓だけでなく、血糖・血圧・脂質・体重なども一緒に確認しましょう。
MASLDは糖尿病、高血圧、脂質異常症、肥満などと深く関係します。食事・運動など生活習慣を早めに見直すことも大切です。
「脂肪肝と言われたけれど、何年もそのままにしている」
「ASTやALTが高いけれど、症状がないので受診していない」
「自分の脂肪肝がどの程度なのか知りたい」
このような方は、お気軽にご相談ください。
症状がない今だからこそ、現在の肝臓の状態を確認し、将来の健康管理につなげていきましょう。
執筆者プロフィール
森川 髙司
医療法人煌仁会 森川内科クリニック 理事長
専門:内科・消化器内科・呼吸器内科
地域の皆様の健康寿命延伸のため、生活習慣病の予防・改善指導に力を入れています。

