「先生、夏の間だけ血圧の薬をやめてもいいですか?」

夏に血圧が下がる理由と、自己判断で薬を中断してはいけない理由を医師が解説

こんにちは。尼崎市の森川内科クリニック、理事長の森川髙司です。

毎年夏になると、診察室で必ずと言っていいほどこんなご相談をいただきます。

「先生、最近血圧が下がってきたんです。夏の間だけ薬をやめてもいいですか?」

実は、この疑問はとても大切です。

というのも、夏に血圧が下がること自体は、ごく自然な体の変化だからです。

しかし、その一方で、夏は脳梗塞や脱水による体調不良が増える季節でもあります。

「血圧が下がったから薬は不要」と自己判断してしまうと、思わぬ危険につながることもあります。

この記事では、

  • なぜ夏は血圧が下がるのか
  • 夏でも降圧薬を自己判断で中止してはいけない理由
  • 夏に気をつけたい脳梗塞・脱水との関係
  • 家庭でできる夏の血圧管理

について、できるだけ専門用語を使わずに分かりやすくお話しします。


なぜ夏になると血圧が下がるのでしょうか?

まず結論からお伝えすると、

暑さによって血管が広がり、さらに汗で水分や塩分が失われるためです。

これは体温を調節するための正常な反応です。

血圧とは、血液が血管の壁を押す力のことです。

冬は体温を逃がさないように血管が収縮するため血圧が高くなりやすく、反対に夏は熱を外へ逃がすため血管が広がり、血圧は自然と下がります。

さらに汗をかくことで、水分だけでなくナトリウム(塩分)も体外へ失われます。その結果、血圧はさらに下がりやすくなります。

実際には、冬より10~20mmHgほど血圧が低くなる方も珍しくありません。

つまり、「夏になって血圧が下がった」という感覚は決して間違いではありません。

問題は、その後の対応です。


夏だけ薬をやめても大丈夫?

自己判断で薬を中止することはおすすめできません。

一方で、夏の血圧に合わせて薬を調整すること自体は、高血圧診療ではよく行われています。

一見矛盾しているようですが、この違いはとても重要です。

夏は血圧が下がり過ぎることで、

  • めまい
  • 立ちくらみ
  • ふらつき
  • 転倒

などが起こりやすくなります。

さらに脱水が加わると、脳梗塞の危険性が高まることもあります。

そのため、家庭血圧の記録をもとに薬の量を調整することは珍しいことではありません。

しかし、ご自身の判断で急に薬をやめてしまうと、秋になって血圧が再び上昇しても気づきにくくなります。

その結果、高血圧の状態が続いてしまうこともあります。

「薬を減らしたい」「やめられないかな」と感じた時こそ、ぜひ受診してください。

家庭で測った血圧の記録を一緒に確認しながら、その時期に合った治療を考えていきましょう。


夏は血圧が低いのに、なぜ脳梗塞は増えるのでしょうか?

その理由は脱水です。

汗を大量にかくと体内の水分が減り、血液は濃縮されます。

すると血栓(血のかたまり)ができやすくなり、脳や心臓の血管が詰まりやすくなることがあります。

つまり、

「血圧は下がっているのに、脳梗塞の危険性は高くなる」

ということが夏には起こり得るのです。

特に注意したいのは次のような場面です。

夜間・早朝

睡眠中にもコップ1杯以上の汗をかいています。

夜間のトイレを避けようとして水分を控えると、朝方には脱水が進みやすくなります。

のどが渇いてから水を飲む

年齢を重ねると、のどの渇きを感じにくくなることがあります。

渇きを感じた時には、すでに軽い脱水が始まっている場合もあります。

利尿薬を服用している方

利尿薬は余分な水分を体外へ排出する薬です。

夏は脱水になりやすいため、服用中の方は特に注意が必要です。

ご自身の薬について分からない場合は、遠慮なく医師や薬剤師へご相談ください。


夏の血圧管理で大切な4つのポイント

夏を安全に過ごすためには、次の4つを心がけましょう。

① 朝と夜に家庭血圧を測る

朝は

  • 起床後1時間以内
  • 排尿後
  • 朝食・服薬前

夜は就寝前に測定しましょう。

測定前は1~2分ほど座って落ち着いてから測ることが大切です。

家庭血圧では135/85mmHg以上が高血圧の目安です。


② のどが渇く前に水分補給

水や麦茶を中心に、コップ1杯ずつこまめに飲みましょう。

特に

  • 起床後
  • 入浴前後
  • 就寝前

は意識して水分を補給してください。

※心不全や腎臓病などで水分制限がある方は、主治医の指示を優先してください。


③ 夏でも減塩を続ける

「汗をかくから塩分をたくさん摂った方がいい」と思われる方もいます。

しかし、それが必要なのは炎天下での長時間の作業や激しい運動をする場合です。

普段の生活では、高血圧の方は1日6g未満の減塩を続けることが大切です。


④ エアコンを我慢しない

暑さを我慢すると体への負担が大きくなります。

室温が28℃を超える環境では、血圧や心臓への負担も増えてしまいます。

エアコンと扇風機を上手に使い、快適な室温を保ちましょう。


こんな時は一度ご相談ください

次のような場合は、自己判断せず受診をおすすめします。

  • 家庭血圧が普段より20mmHg以上変化する日が続く
  • めまいや立ちくらみが増えてきた
  • 薬を減らしたい、やめたいと感じている
  • 健康診断で高血圧を指摘されたままになっている
  • 大きないびきや日中の強い眠気があり、高血圧もある

最後の項目は意外かもしれません。

睡眠時無呼吸症候群は、高血圧がなかなか改善しない原因として隠れていることがあります。


森川内科クリニックの高血圧診療

当院では、一人ひとりの生活や季節の変化に合わせた高血圧治療を大切にしています。

診察室だけの血圧ではなく、ご自宅で測定した家庭血圧を重視し、必要に応じて季節に合わせた薬の調整をご提案しています。

また、睡眠時無呼吸症候群の検査・CPAP治療にも対応しており、「薬を飲んでも血圧が下がりにくい」という方には睡眠の面からも原因を探ります。

さらに、理事長は企業の産業医として働く世代の健康管理にも携わっており、お仕事や生活スタイルに合わせた無理のない治療計画をご提案しています。

将来的に通院が難しくなった場合には訪問診療にも対応しており、地域のかかりつけ医として長く皆さまの健康を支えてまいります。


おわりに

夏に血圧が下がるのは自然なことです。

そして、「薬を減らせるのでは」と考えることも、ご自身の体の変化に気づいている証拠です。

ただし、その判断だけは自己判断ではなく、ぜひ医師と一緒に行いましょう。

家庭で測った血圧の記録をもとに相談していただければ、その時期の体調に合わせた最適な治療をご提案できます。

この夏を安心して過ごすためにも、気になることがあればお気軽にご相談ください。


ご相談・ご予約はこちら

医療法人 煌仁会 森川内科クリニックでは、お電話・Webのいずれからでもご予約いただけます。

「夏だから薬をやめてもいいのかな?」

そんな疑問がある方も、自己判断で中止する前にぜひ一度ご相談ください。

よくあるご質問(FAQ)

Q1. 血圧の薬は、一度飲み始めたら一生やめられないのですか?

A. 必ずしも一生飲み続けるわけではありません。

減塩や体重管理、運動などの生活習慣の改善によって血圧が安定し、家庭血圧でも良好な状態が続けば、医師の判断で薬を減らしたり、中止を検討できる場合があります。

ただし、血圧は季節や体調によって変化するため、薬を減らすかどうかは家庭血圧の記録をもとに医師と相談して決めることが大切です。
自己判断で薬を中断すると、血圧の上昇に気づかず、脳卒中や心筋梗塞のリスクが高まることがあります。


Q2. 家庭血圧は、いつ・どのように測るのが正しいですか?

A. 朝と夜の1日2回測るのがおすすめです。

朝は、

  • 起床後1時間以内
  • 排尿後
  • 朝食・服薬前

夜は就寝前に測定しましょう。

測る前には椅子に座って1~2分ほど安静にし、腕を心臓の高さに保つことがポイントです。

家庭血圧では、135/85mmHg以上が高血圧の目安とされています。測定した数値は血圧手帳やスマートフォンのアプリに記録し、受診時に持参していただくと、より適切な治療につながります。


Q3. 夏は何をどのくらい飲めばいいですか?

A. 水や麦茶を、のどが渇く前にこまめに飲みましょう。

一度にたくさん飲むよりも、コップ1杯程度を数回に分けて飲むことが大切です。

特に、

  • 起床後
  • 入浴前後
  • 就寝前

は意識して水分を補給しましょう。

なお、スポーツドリンクは糖分を多く含むものもあるため、日常の水分補給には水や麦茶がおすすめです。

※心不全や腎臓病などで水分制限を受けている方は、必ず主治医の指示に従ってください。


Q4. 夏は汗をかくので、塩分を多めに摂ったほうがいいですか?

A. 日常生活では、塩分を増やす必要はありません。

高血圧の方は、夏でも1日6g未満を目標とした減塩を続けることが基本です。

塩分補給が必要になるのは、炎天下で長時間作業をしたり、激しい運動で大量の汗をかいたりするような特別な場合です。

「自分は塩分を補ったほうがいいのだろうか」と迷う場合は、診察時にお気軽にご相談ください。


Q5. いびきと高血圧には関係がありますか?

A. はい。睡眠時無呼吸症候群が原因となっていることがあります。

睡眠中に何度も呼吸が止まる睡眠時無呼吸症候群では、体が繰り返し強いストレスを受けるため、高血圧を引き起こしたり、薬を飲んでも血圧が下がりにくくなったりすることがあります。

次のような症状がある方は、一度検査を受けることをおすすめします。

  • 大きないびきをかく
  • 睡眠中に呼吸が止まっていると言われたことがある
  • 日中に強い眠気がある
  • 血圧がなかなか下がらない

当院では、睡眠時無呼吸症候群の検査からCPAP治療まで一貫して対応しています。


Q6. 健康診断で血圧が高いと言われましたが、症状がありません。受診したほうがいいですか?

A. はい。症状がなくても、一度受診することをおすすめします。

高血圧は「サイレントキラー」とも呼ばれ、自覚症状がないまま少しずつ血管を傷つけ、脳卒中・心筋梗塞・腎臓病などの重大な病気のリスクを高めます。

「症状がないから大丈夫」とは限りません。

まずは家庭血圧を測り、ご自身の血圧を把握することが大切です。健診で高血圧を指摘された方は、そのまま放置せず、一度医療機関で相談することをおすすめします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です