自覚症状が少ない脂質異常症|放置するとどうなる?
「コレステロールが高いと言われたけれど、体調は変わらない」
「健康診断で毎年指摘されているけれど、そのままにしている」
「少し高いくらいなら大丈夫だと思っている」
「症状がないのに治療する必要があるの?」
このように感じている方は少なくありません。
脂質異常症の特徴の一つは、
自覚症状がほとんどないこと
です。
痛みやだるさがないまま経過することが多いため、健康診断で初めて気づく方もいます。
しかし、症状がないことと、将来の健康への影響がないことは同じではありません。
私は兵庫県尼崎市・JR塚口駅近くで内科を診療している、森川内科クリニックの森川髙司です。
今回は、脂質異常症を放置するとどうなるのか、動脈硬化とどのような関係があるのか、健診で指摘されたらどうすればよいのかについてわかりやすく解説します。
脂質異常症とは?
脂質異常症とは、血液中の脂質の値が基準から外れている状態です。
代表的なのは、
- LDLコレステロールが高い
- HDLコレステロールが低い
- 中性脂肪(トリグリセライド)が高い
といった状態です。
つまり、
「脂質異常症=コレステロールが高い」だけではありません。
どの脂質に異常があるのかによって、原因や生活習慣の見直し方、治療方針が異なることがあります。
なぜ症状がないの?
LDLコレステロールが高くても、それだけで痛みや発熱が起こるわけではありません。
そのため、
「体調がいいから大丈夫」
「何も困っていないから治療しなくてもいい」
と思ってしまうことがあります。
しかし、LDLコレステロールが高い状態が長く続くと、血管の壁にコレステロールが蓄積し、動脈硬化が進む原因になります。
症状がない時期から将来のリスクを考えること
が、脂質異常症を管理する大きな目的です。
「動脈硬化」とは?
動脈硬化とは、その名前のとおり単純に「血管が硬くなる」だけではありません。
特にLDLコレステロールが関係する**粥状動脈硬化(アテローム動脈硬化)**では、血管の壁に脂質などが蓄積し、プラークと呼ばれる病変が形成されます。
それによって血管が狭くなったり、プラークが破れて血栓ができたりすると、血液の流れが妨げられることがあります。
問題になるのは、それが心臓や脳などの重要な血管で起こる場合です。
心臓の血管で動脈硬化が進むと?
心臓の筋肉へ血液を送っている血管を冠動脈といいます。
冠動脈の動脈硬化が進むと、
- 狭心症
- 心筋梗塞
などにつながることがあります。
特に心筋梗塞では、血栓などによって冠動脈が詰まり、心臓の筋肉に十分な血液が届かなくなります。
命に関わることもあるため、脂質異常症の治療では、このような動脈硬化性疾患を予防することが大切です。
脳の血管にも関係します
動脈硬化は脳の血管にも関係します。
脳へ血液を送る血管が動脈硬化などによって狭くなったり詰まったりすると、脳梗塞につながることがあります。
ただし、脳卒中にはさまざまな種類があり、高血圧など他の危険因子も重要です。
「コレステロールだけが脳卒中の原因」
というわけではありません。
脂質異常症を放置すると必ず心筋梗塞になる?
いいえ。
脂質異常症があるからといって、全員が心筋梗塞や脳梗塞になるわけではありません。
ここは必要以上に怖がらないでいただきたいところです。
一方、LDLコレステロール高値は動脈硬化性疾患の重要な危険因子です。
そのため、
「症状がないから放置する」
のではなく、
自分にはどの程度のリスクがあり、どのくらいの管理が必要なのかを確認する
ことが重要です。
LDLコレステロールはいくつから高い?
一般的な診断基準では、
LDLコレステロール140mg/dL以上
が高LDLコレステロール血症に該当します。
また、
120~139mg/dL
は境界域高LDLコレステロール血症とされています。
ただし、
「139なら安全で、140になった瞬間に危険になる」
という意味ではありません。
LDLコレステロールと動脈硬化性疾患のリスクは、単純に一つの数字だけで区切れるものではありません。
「少し高いだけ」なら放置していい?
ここも重要です。
例えばLDLコレステロールが130mg/dLだった場合、
「140未満だから何もしなくていい」
とは限りません。
なぜなら、脂質の管理目標はその人の動脈硬化性疾患のリスクによって異なるからです。
例えば、
- 高血圧
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 喫煙
- 心筋梗塞や狭心症などの既往
- 脳梗塞などの既往
- 末梢動脈疾患
- 家族歴
なども確認します。
同じLDLコレステロールの値でも、必要な管理の程度は一人ひとり違います。
LDLがかなり高い場合は体質も確認します
LDLコレステロールがかなり高い場合には、生活習慣だけでなく、遺伝的な病気が隠れていないかを確認することも大切です。
代表的なのが、
家族性高コレステロール血症(FH)
です。
FHでは、生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすく、若い年代から動脈硬化が進みやすくなります。
特に、
- LDLコレステロールが非常に高い
- 若いころからコレステロールが高い
- 家族にもLDLが高い人がいる
- 家族に若い年代で心筋梗塞などを発症した人がいる
といった場合には、その情報を医師へ伝えてください。
脂質異常症は生活習慣だけが原因?
いいえ。
食事や運動などの生活習慣は重要ですが、
脂質異常症=生活習慣が悪いから起こる
とは限りません。
例えば、
- 遺伝的な体質
- 加齢やホルモンの変化
- 甲状腺機能低下症
- 糖尿病
- 腎臓病
- 一部の肝臓・胆道系疾患
- 薬剤
などが脂質の異常に関係することがあります。
「自分の食生活が悪かったからだ」と決めつけず、原因を確認しましょう。
生活習慣を変えれば改善する?
生活習慣が関係している場合には、
- 食生活
- 運動
- 体重管理
- 禁煙
- 飲酒習慣
などを見直すことで、脂質の改善や動脈硬化性疾患の予防につながることがあります。
ただし、
生活習慣を改善すれば全員が薬なしで正常になる
わけではありません。
もともとのLDL値や体質、持病、動脈硬化性疾患のリスクによっては、生活習慣の改善とあわせて薬による治療が必要になる場合があります。
食事では何を見直す?
LDLコレステロールが高い方では、
「卵を食べなければいいですか?」
「油を全部やめればいいですか?」
と質問されることがあります。
しかし、特定の食品を一つだけ禁止するのではなく、食事全体を見直すことが大切です。
例えば、
- 食べ過ぎを避ける
- 飽和脂肪酸を摂り過ぎない
- 魚を取り入れる
- 野菜・海藻・きのこ類などを取り入れる
- 甘い飲み物や菓子類の摂り過ぎを見直す
- 飲酒量を確認する
などがあります。
どの部分を重点的に見直すかは、LDLが高いのか、中性脂肪が高いのかによっても変わります。
運動も大切です
運動や日常の身体活動を増やすことも、脂質異常症の管理や動脈硬化予防に役立ちます。
いきなり激しい運動をする必要はありません。
例えば、
- ウォーキング
- 買い物で歩く時間を増やす
- 階段を利用する
- 長時間座り続けない
- 無理のない範囲で筋トレをする
など、できることから始めてみましょう。
高血圧、心臓病、腎臓病などがある方は、運動の内容について主治医と相談してください。
薬を飲むことになったら「重症」ということ?
必ずしもそうではありません。
脂質異常症の薬は、
数字を下げることだけではなく、将来の心筋梗塞や脳梗塞などを予防すること
を目的として使用します。
薬を使うかどうかは、
- LDLコレステロールの値
- 年齢
- 高血圧
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 喫煙
- 動脈硬化性疾患の既往
- 家族歴
などを総合的に評価して決めます。
「症状がないのに薬を飲む意味がわからない」
という場合には、なぜ治療が必要なのかを医師に確認してみましょう。
健診で脂質異常症を指摘されたら
健康診断で異常を指摘された場合には、
健診結果を持って医療機関へ相談する
ことをおすすめします。
特に、
- LDLコレステロールがかなり高い
- 毎年異常を指摘されている
- 糖尿病がある
- 高血圧がある
- 腎臓病がある
- 喫煙している
- 心筋梗塞・狭心症・脳梗塞などの既往がある
- 家族に若くして心筋梗塞などを起こした人がいる
といった場合には、一度現在のリスクを確認しましょう。
過去数年分の健康診断結果があれば、受診時にお持ちください。
胸痛や麻痺が出るまで待ってはいけません
脂質異常症そのものは無症状でも、動脈硬化性疾患を発症すると急な症状が現れることがあります。
例えば、
- 突然の強い胸の痛み・圧迫感
- 強い息苦しさ
- 冷や汗を伴う胸部症状
- 突然、片側の手足に力が入らない
- 突然、顔の片側がゆがむ
- 突然、言葉が出にくい・ろれつが回らない
といった症状です。
このような場合は、
「コレステロールの診察を予約しよう」ではなく、緊急性のある病気を考えて速やかに医療機関を受診する必要があります。
症状が強い場合は救急要請を検討してください。
森川内科クリニックでできること
森川内科クリニックでは、
「健康診断でコレステロールや中性脂肪の異常を指摘された」
という方のご相談を受け付けています。
必要に応じて、
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪
- 血糖・HbA1c
- 血圧
- 腎機能
- 肝機能
などを確認します。
また、
- 食生活
- 運動
- 体重
- 喫煙
- 飲酒
- 家族歴
- 持病
- 服用している薬
なども確認し、動脈硬化性疾患のリスクを総合的に考えます。
そのうえで、生活習慣の改善で経過を見るのか、薬による治療を検討するのかを一緒に考えていきます。
まとめ|脂質異常症は「症状がない時期」の管理が大切です
脂質異常症について、大切なポイントを3つにまとめます。
1. 脂質異常症は自覚症状がほとんどないことが多い病気です。
体調がよいからといって、脂質の異常がなくなったとは判断できません。
2. LDLコレステロールが高い状態が続くと、動脈硬化を進める原因になります。
動脈硬化は狭心症・心筋梗塞・脳梗塞などにつながることがあります。ただし、脂質異常症があれば必ずこれらを発症するわけではありません。
3. 治療の必要性は、コレステロールの数字だけでは決まりません。
糖尿病、高血圧、慢性腎臓病、喫煙、家族歴、過去の心血管疾患などを含めて、その人全体のリスクを評価することが大切です。
「毎年コレステロールが高いと言われている」
「症状がないので何年も放置している」
「少し高いだけだけれど、治療が必要?」
「薬を飲んだ方がいいのかわからない」
このような場合は、お気軽にご相談ください。
脂質異常症は、症状が出てからではなく、症状がないうちから将来の血管の健康を考えることが大切です。
執筆者プロフィール
森川 髙司
医療法人煌仁会 森川内科クリニック 理事長
専門:内科・消化器内科・呼吸器内科
地域の皆様の健康寿命延伸のため、生活習慣病の予防・改善指導に力を入れています。

