コレステロールの薬はいつから必要?薬について知っておきたいこと
「健康診断でLDLコレステロールが高いと言われた。薬を飲んだ方がいい?」
「できれば薬を飲まずに食事や運動で改善したい」
「LDLがどのくらいになったら薬が必要?」
「一度飲み始めたら一生やめられない?」
このような疑問を持っている方は少なくありません。
脂質異常症の治療では、すべての方がすぐに薬を飲むわけではありません。
一方で、
「まず食事と運動を何か月か試してからでなければ薬を使わない」
というわけでもありません。
薬が必要かどうかは、
LDLコレステロールの値だけではなく、将来の動脈硬化性疾患のリスクを含めて判断する
ことが大切です。
私は兵庫県尼崎市・JR塚口駅近くで内科を診療している、森川内科クリニックの森川髙司です。
今回は、コレステロールの薬はいつから必要なのか、どのような薬があるのか、飲み始めたらずっと続けるのか、副作用はどう考えればよいのかについてわかりやすく解説します。
LDLがいくつになったら薬が必要?
最もよく聞かれる質問ですが、
「LDLコレステロールが○mg/dLを超えたら、全員が薬を飲む」
という単純なルールではありません。
一般的な診断基準では、
LDLコレステロール140mg/dL以上
は高LDLコレステロール血症に該当します。
しかし、
診断基準と、薬を始める基準は同じではありません。
例えば同じLDL 150mg/dLでも、
- 年齢
- 血圧
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 喫煙
- HDLコレステロール
- 心筋梗塞や狭心症などの既往
- 脳梗塞などの既往
- 家族歴
などによって、必要な治療は変わります。
そのため、
LDLの数字だけではなく、その人全体のリスクを見る
ことが重要です。
薬を飲まず、まず生活習慣を改善してもいい?
動脈硬化性疾患のリスクがそれほど高くなく、緊急に薬物療法が必要ではない場合には、
- 食事
- 運動
- 体重管理
- 禁煙
- 飲酒習慣
などを見直しながら経過を見ることがあります。
食生活では、
- 飽和脂肪酸の摂り過ぎを見直す
- 魚や大豆製品を取り入れる
- 野菜・海藻・きのこなどを取り入れる
- 食べ過ぎを避ける
などがポイントになります。
運動習慣をつくることも大切です。
ただし、
「脂質異常症なら、全員まず生活習慣だけで様子を見る」
わけではありません。
最初から薬を検討する場合もあります
動脈硬化性疾患のリスクが高い方では、生活習慣の改善と並行して薬物療法を検討します。
特に重要なのが、
すでに心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患を発症したことがある方
です。
このような方では、再発予防のため、より積極的なLDLコレステロール管理が必要になります。
また、
- 糖尿病
- 慢性腎臓病
- 高血圧
- 喫煙
- その他の動脈硬化性疾患
- 複数の危険因子
などがある場合にも、全体のリスクを評価して治療方針を決めます。
LDLがかなり高い場合は「体質」を確認します
LDLコレステロールがかなり高い場合には、
家族性高コレステロール血症(FH)
が隠れていないかを確認することも重要です。
FHは遺伝的な原因によって、生まれつきLDLコレステロールが高くなりやすい病気です。
例えば、
- LDLコレステロールが非常に高い
- 若いころからLDLが高い
- 家族にもコレステロールが高い人がいる
- 家族に若くして心筋梗塞などを発症した人がいる
- アキレス腱の肥厚などがある
といった場合には注意します。
成人で未治療のLDLコレステロールが180mg/dL以上の場合は、FHの可能性も考えて家族歴などを確認します。
FHでは生活習慣の改善だけで十分にLDLを下げることが難しい場合が多く、薬物療法が重要になります。
コレステロールの薬は何のために飲む?
脂質異常症の薬の目的は、
単に健康診断の数字を正常にすることではありません。
重要なのは、
LDLコレステロールなどを適切に管理し、将来の心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を予防すること
です。
特に、すでに動脈硬化性疾患を発症したことがある方では、再発予防という重要な目的があります。
「症状がないのに、なぜ薬を飲まないといけないの?」
と思われる方もいます。
脂質異常症は自覚症状がほとんどないため、症状を改善するためではなく、
将来の病気を予防するために治療する
という考え方が重要です。
どのような薬を使うの?
LDLコレステロールを下げる薬には、いくつかの種類があります。
代表的なのが、
スタチン
と呼ばれる薬です。
スタチンは肝臓でのコレステロール合成に関わる酵素を抑えることで、血液中のLDLコレステロールを低下させます。
LDLコレステロールを下げる治療では、中心的に使用されている薬です。
スタチン以外の薬もあります
LDLコレステロールを下げる薬には、スタチン以外にもあります。
例えば、
エゼチミブ
という薬があります。
エゼチミブは、小腸からのコレステロール吸収を抑えることでLDLコレステロールを低下させます。
また、状態によっては、
- PCSK9阻害薬
- その他の脂質異常症治療薬
などを使用することがあります。
一つの薬だけで管理目標に届かない場合には、作用の異なる薬を組み合わせることもあります。
どの薬が適しているかは、LDL値、動脈硬化性疾患のリスク、腎機能・肝機能、他に服用している薬などを考えて決めます。
中性脂肪が高い場合は薬が違うこともあります
「コレステロールの薬」とまとめて呼ばれることがありますが、LDLコレステロールと中性脂肪では治療の考え方が異なることがあります。
中性脂肪が高い場合には、
- 食生活
- 飲酒
- 体重
- 糖尿病
- 他の病気
などを確認します。
必要に応じて、中性脂肪を下げる作用のある薬を使用する場合もあります。
LDLと中性脂肪が両方高い場合には、動脈硬化性疾患のリスクやそれぞれの数値を見ながら治療方針を決めます。
薬を飲み始めたら一生やめられない?
これもよく聞かれる質問です。
結論からいうと、
「一度始めたら、どんな場合でも一生同じ薬を同じ量で飲まなければならない」わけではありません。
治療中には、
- LDLコレステロールの変化
- 食生活
- 体重
- 他の病気
- 年齢
- 副作用
- 動脈硬化性疾患のリスク
などを確認しながら、薬の種類や量を調整することがあります。
状況によっては治療内容を見直せる場合もあります。
数値が下がったら薬をやめてもいい?
ここは非常に重要です。
薬を飲み始めてLDLコレステロールが下がると、
「正常になったから薬はもう必要ない」
と思う方がいます。
しかし、
薬によってLDLが下がっている場合、薬を中止すると再び上昇することがあります。
つまり、
「薬を飲んで正常値になった=脂質異常症が完全に治った」
とは限りません。
自己判断で中止せず、
「減らせる可能性はありますか?」
「今後も続ける必要がありますか?」
と主治医に相談してください。
特に心筋梗塞や狭心症の既往、FHなどがある場合には、長期的な治療が重要になることがあります。
生活習慣を改善すれば薬を減らせる?
生活習慣の改善によって脂質の状態がよくなれば、治療内容を再検討できる場合があります。
例えば、
- 食生活が改善した
- 運動習慣がついた
- 適正体重に近づいた
- 禁煙した
などによって、全体的な動脈硬化リスクが改善することがあります。
一方、
生活習慣を改善すれば必ず薬をやめられる
わけではありません。
遺伝的にLDLが高い方や、動脈硬化性疾患のリスクが高い方では、生活習慣が良好でも薬物療法が必要な場合があります。
副作用が心配です
「コレステロールの薬は副作用が怖い」
という相談もあります。
スタチンでは、筋肉の症状や肝機能検査値の変化などがみられることがあります。
非常にまれですが、重い筋障害が起こることもあります。
大切なのは、
副作用が心配だから最初から治療を避けることでも、症状を我慢して飲み続けることでもありません。
薬を開始した後は、必要に応じて症状や血液検査を確認しながら治療を続けます。
筋肉痛が出たらどうすればいい?
運動をした後などにも筋肉痛は起こるため、
筋肉痛=すべて薬の副作用
とは限りません。
一方、
- 原因がはっきりしない強い筋肉痛
- 筋力が低下した感じ
- 強いだるさ
- 赤褐色・褐色の尿
などが現れた場合には、医療機関へ相談してください。
症状が強い場合には速やかな評価が必要です。
気になる症状がある場合には、自己判断で長期間放置しないようにしましょう。
薬が合わなかったらどうする?
一つの薬で副作用が疑われたからといって、
「もうコレステロールの治療はできない」
とは限りません。
状況に応じて、
- 薬の量を調整する
- 別の薬へ変更する
- 作用の異なる薬を使用する
などを検討できる場合があります。
また、甲状腺機能低下症など、LDL上昇や筋肉症状に関係する別の病気が隠れていないか確認することもあります。
治療を続けにくいと感じたら、まず主治医へ相談してください。
「薬を飲みたくない」と相談してもいい?
もちろんです。
薬に対して、
「副作用が怖い」
「できれば薬に頼りたくない」
「一生飲むのが心配」
と感じるのは珍しいことではありません。
大切なのは、
なぜ薬を勧められているのかを理解したうえで治療方針を決めること
です。
例えば、
- 現在のLDLはいくつなのか
- 自分の動脈硬化リスクはどの程度なのか
- なぜ薬が必要なのか
- 生活習慣だけで様子を見る選択肢はあるのか
- どの程度までLDLを下げることを目指すのか
などを確認してみましょう。
納得しながら治療を続けることが大切です。
健診でLDLが高かったら、まず何をする?
健康診断でLDLコレステロールが高いと言われたら、
「薬を飲むかどうか」だけを考える前に、全体の状態を確認する
ことが大切です。
受診時には、できれば過去数年分の健康診断結果もお持ちください。
確認するポイントには、
- LDL・HDLコレステロール
- 中性脂肪
- 血圧
- 血糖・HbA1c
- 腎機能
- 肝機能
- 喫煙
- 家族歴
- 心筋梗塞や狭心症などの既往
- 服用している薬
などがあります。
そのうえで、生活習慣の改善だけで経過を見るのか、薬物療法も始めるのかを考えます。
森川内科クリニックでできること
森川内科クリニックでは、
「健診でコレステロールが高いと言われたけれど、薬が必要かわからない」
という方のご相談を受け付けています。
必要に応じて、
- LDLコレステロール
- HDLコレステロール
- 中性脂肪
- 血糖・HbA1c
- 血圧
- 腎機能
- 肝機能
などを確認します。
また、
- 食生活
- 運動
- 体重
- 喫煙
- 飲酒
- 家族歴
- 持病
- 服用している薬
なども確認します。
そのうえで、
生活習慣の改善で経過を見るのか、薬による治療を始めるのか
を一緒に考えていきます。
薬を使用する場合も、「なぜ必要なのか」「どのような効果を期待するのか」をできるだけわかりやすくご説明します。
まとめ|薬が必要かどうかはLDLの数字だけでは決まりません
コレステロールの薬について、大切なポイントを4つにまとめます。
1. LDLが高いからといって、全員がすぐ薬を飲むわけではありません。
LDL値だけでなく、年齢、糖尿病、血圧、慢性腎臓病、喫煙、心血管疾患の既往などを含めて判断します。
2. 一方で、全員がまず生活習慣だけで様子を見るわけでもありません。
すでに冠動脈疾患がある方やFHなどでは、生活習慣の改善と並行して薬物療法が重要になる場合があります。
3. 薬の目的は、数字を下げることだけではありません。
LDLコレステロールなどを適切に管理し、将来の心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を予防することが大切な目的です。
4. 薬を始めた後も治療内容は見直します。
ただし、数値が下がったからといって自己判断で中止すると、再びLDLが上昇することがあります。
「LDLが高いけれど薬が必要?」
「できれば食事と運動で改善したい」
「薬を一生飲むのが心配」
「副作用が怖い」
このような疑問があれば、お気軽にご相談ください。
薬を飲む・飲まないを数字だけで決めるのではなく、自分の将来のリスクを知ったうえで治療方法を考えることが大切です。
執筆者プロフィール
森川 髙司
医療法人煌仁会 森川内科クリニック 理事長
専門:内科・消化器内科・呼吸器内科
地域の皆様の健康寿命延伸のため、生活習慣病の予防・改善指導に力を入れています。

