糖尿病予備軍とは?気をつけたいチェックポイントと、今からできること【内科医が解説】

「予備軍」は、体から届いた早めのお知らせです

こんにちは。兵庫県尼崎市の森川内科クリニック、理事長の森川髙司です。

健康診断の結果を見て、

「血糖値が少し高めです」

「HbA1cが基準を超えています」

「糖尿病予備軍かもしれません」

と言われたことはありませんか。

そのとき、

「まだ糖尿病ではないなら大丈夫」

「症状もないし、来年の健診まで様子を見よう」

と思って、そのままにしてしまう方は少なくありません。

しかし、糖尿病予備軍は「何もしなくても大丈夫な状態」ではありません。一方で、「もう糖尿病になることが決まった状態」でもありません。

血糖値が正常より高くなり始めた段階で気づき、生活習慣を見直すことで、糖尿病への進行を防いだり、数値を改善したりできる可能性があります。厚生労働省も、糖尿病予備群や軽症糖尿病の段階では自覚症状がほとんどない一方、生活改善によって正常な値へ戻る場合があると説明しています。

「予備軍」と言われたことは、怖い宣告ではありません。

体から届いた、早めに軌道修正するためのお知らせと考えてください。


糖尿病予備軍とは、どのような状態ですか?

血糖値が正常より高いものの、糖尿病の診断基準には達していない状態です

私たちが食事から取った炭水化物は、体内でブドウ糖となり、血液中へ入ります。

すると、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンが働き、ブドウ糖を筋肉や脂肪などの細胞へ取り込ませます。

ところが、

  • インスリンが出にくくなる
  • インスリンが十分に効かなくなる
  • その両方が起こる

と、血液中のブドウ糖が増え、血糖値が高くなります。糖尿病は、インスリンが十分に働かず、慢性的に血糖値が高くなる病気です。

糖尿病予備軍は、血糖値が正常範囲を超え始めているものの、糖尿病と確定する基準には達していない状態を指す一般的な呼び方です。

医学的には、検査結果に応じて、

  • 正常高値
  • 境界型
  • 糖尿病型

などに分類して評価します。


健診結果の数値は、どのように見ればよいですか?

空腹時血糖

空腹時血糖とは、通常10時間以上食事を取っていない状態で測る血糖値です。

空腹時血糖一般的な位置づけ
100mg/dL未満正常域
100~109mg/dL正常高値として注意
110~125mg/dL境界型が疑われる範囲
126mg/dL以上糖尿病型

空腹時血糖が126mg/dL以上であっても、原則として1回の検査だけで直ちに糖尿病と確定するわけではありません。

別の日の再検査やHbA1c、糖尿病の典型的な症状などを合わせて診断します。日本糖尿病学会では、空腹時血糖126mg/dL以上、75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上のいずれかを「糖尿病型」としています。

HbA1c

HbA1cは、過去1~2か月程度の血糖状態を反映する指標です。

HbA1c一般的な受け止め方
5.5%以下多くの場合、正常範囲
5.6~5.9%将来の糖尿病リスクを意識する範囲
6.0~6.4%糖尿病の可能性を含め、詳しい確認が必要
6.5%以上糖尿病型

ここで注意したいのは、HbA1c 5.6~6.4%だけで「境界型」と確定するわけではないという点です。

HbA1cは重要な指標ですが、貧血、腎臓病、出血、輸血などの影響を受けることもあります。空腹時血糖、食後血糖、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験などを組み合わせて判断します。

HbA1c 6.5%以上も糖尿病型の基準の一つですが、診断には血糖値や再検査、症状などを合わせて確認します。

食後血糖だけ高い場合もあります

健康診断の空腹時血糖が正常でも、食後だけ血糖値が高くなる「食後高血糖」が隠れていることがあります。

インスリンの分泌が遅れたり、働きが弱くなったりすると、食後の血糖値が急に上がり、下がるまでに時間がかかります。食後高血糖は、糖尿病予備群や動脈硬化のリスクを考えるうえでも重要です。

空腹時血糖とHbA1cの結果が一致しない場合や、家族歴・肥満などのリスクが高い場合には、75g経口ブドウ糖負荷試験を検討することがあります。


「糖尿病予備軍」と言われたら、すぐ糖尿病になりますか?

必ず糖尿病へ進むわけではありません

糖尿病予備軍と指摘されても、全員が糖尿病へ進行するわけではありません。

一方、そのまま同じ生活を続けると、糖尿病型へ悪化する可能性は正常な方より高くなります。日本糖尿病学会は、境界型では糖尿病型へ悪化するリスクが高いため、食事・運動・肥満の是正を行い、定期的に検査するよう勧めています。

食事や運動を中心とした生活習慣への介入により、体重や血糖状態が改善し、2型糖尿病の発症を抑えられることが国内外の研究で示されています。

つまり、予備軍は、

「いずれ糖尿病になるのを待つ段階」ではなく、「今から進行を防ぐ段階」

です。


予備軍の段階から注意する理由

1.自覚症状がほとんどありません

血糖値が少し高い程度では、多くの場合、体調の変化を感じません。

「症状がないから問題ない」と思いやすいのですが、血糖の異常は症状が出る前から進行します。

口の渇き、多尿、体重減少、強い倦怠感などが現れるころには、血糖値がかなり高くなっている場合があります。

2.糖尿病へ進行する可能性があります

インスリンの分泌低下や効きにくさが続くと、血糖値が徐々に上昇し、糖尿病の診断基準を満たすようになることがあります。

特に、肥満、運動不足、家族歴、高血圧、脂質異常症などが重なると注意が必要です。

3.血管への負担は予備軍の段階から始まることがあります

糖尿病では、網膜症、腎症、神経障害などに加え、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。

糖尿病予備群や軽症糖尿病の段階から、動脈硬化などの合併症が進み始める場合があることも知られています。

そのため、血糖だけでなく、

  • 血圧
  • LDLコレステロール
  • 中性脂肪
  • 体重
  • 喫煙
  • 腎機能

なども合わせて管理することが重要です。


糖尿病予備軍に注意したい方のチェックリスト

次の項目に当てはまるものがないか、確認してみましょう。

  • 健診で空腹時血糖やHbA1cが高めと言われた
  • 以前より体重が増えた
  • お腹まわりが大きくなった
  • 家族に2型糖尿病の方がいる
  • 日常的にほとんど運動しない
  • 甘い飲み物をよく飲む
  • 間食、夜食、食べ過ぎが多い
  • 朝食を抜き、夜にまとめて食べる
  • 早食いの傾向がある
  • 高血圧を指摘されている
  • LDLコレステロールや中性脂肪が高い
  • 脂肪肝を指摘された
  • 妊娠糖尿病になったことがある
  • 大きないびきや日中の眠気がある
  • 喫煙している
  • 40歳以上である

当てはまる項目が多いほど、糖尿病の発症リスクが高い可能性があります。

ただし、項目数だけで糖尿病や予備軍を診断することはできません。反対に、痩せている方や、生活に気をつけている方でも、体質や加齢などによって血糖値が高くなることがあります。

「自分は太っていないから大丈夫」とは限りません。


次の症状がある場合は、予備軍と思い込まず早めに受診してください

糖尿病予備軍では、通常、はっきりした自覚症状はありません。

次のような症状がある場合は、すでに血糖値がかなり高くなっている可能性があります。

  • のどが異常に渇く
  • 水分を大量に飲む
  • 尿の回数や量が増えた
  • 夜中に何度も尿へ行く
  • 食べているのに体重が減る
  • 強いだるさがある
  • 傷が治りにくい
  • 感染症を繰り返す
  • 目がかすむ

糖尿病の診断指標として、空腹時血糖126mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c 6.5%以上などがあります。典型的な症状を伴う場合は、早急な評価が必要です。

さらに、

  • 強い口渇と大量の尿
  • 吐き気、嘔吐
  • 腹痛
  • 呼吸が深く速い
  • 意識がぼんやりする
  • 水分を取れない

場合は、重い高血糖状態の可能性があります。通常の予約を待たず、早急に医療機関へ相談してください。意識がおかしい場合は119番です。


予備軍と言われたら、まず何をすればよいですか?

1.健診結果を持って受診する

最初に必要なのは、現在の状態を正しく把握することです。

健診結果に、

  • 空腹時血糖
  • HbA1c
  • 尿糖
  • 体重・腹囲
  • 血圧
  • コレステロール
  • 中性脂肪
  • 肝機能

などが記載されている場合は、その結果を医療機関へ持参してください。

必要に応じて再検査を行い、

  • 一時的な上昇なのか
  • 正常高値なのか
  • 境界型なのか
  • すでに糖尿病型なのか
  • 食後高血糖が疑われるのか

を確認します。

「予備軍」と言われたまま、何年も検査を受けないことは避けましょう。

2.自分で極端な食事制限を始めない

糖質を完全に抜く、食事を1日1回にするなど、極端な方法は長続きしにくく、栄養の偏りや反動による過食につながることがあります。

糖尿病予防の食事は、特別な食品だけを食べることではありません。

  • 食事量を適正にする
  • 食事時間を整える
  • 甘い飲み物を減らす
  • 野菜や食物繊維を増やす
  • 脂質の取りすぎを減らす

といった、継続できる改善が基本です。糖尿病の発症予防では、運動と食生活の改善が中心となり、肥満がある場合は減量を目指します。


今日からできる食事の工夫

甘い飲み物を見直す

ジュース、加糖コーヒー、スポーツドリンク、甘い乳飲料などは、短時間で多くの糖質を取ることにつながります。

まずは、

  • 麦茶
  • 無糖のお茶
  • 無糖のコーヒー

などへ置き換えることから始めましょう。

「食事は変えられない」という方でも、飲み物の見直しは取り組みやすく、効果を期待できる場合があります。

1日3食を基本にする

朝食を抜き、夕食にまとめて食べると、食後血糖が上がりやすくなることがあります。

1日3食を基本に、食事時間と量の偏りを減らしましょう。欠食、遅い時間の夕食、就寝前の間食、まとめ食いを避けることが勧められています。

ゆっくり食べる

早食いは、満腹を感じる前に食べ過ぎる原因になります。

  • 一口ごとによく噛む
  • 箸を置く時間を作る
  • 食事に15~20分以上かける
  • 大皿から直接食べず、最初に取り分ける

などを意識しましょう。

野菜や主菜を組み合わせる

ご飯、パン、麺だけの食事では、血糖値が急に上がりやすくなります。

  • 野菜
  • きのこ
  • 海藻
  • 大豆製品

などを組み合わせます。

野菜やおかずを先に食べ、主食を後にする食べ方は、食後血糖の上昇を抑える工夫の一つです。ただし、食べる順番だけで食べ過ぎを帳消しにできるわけではありません。総量や食事内容も重要です。

夜食と間食を見直す

間食を完全に禁止する必要はありませんが、

  • 空腹でないのに食べる
  • 寝る直前に食べる
  • 袋から直接食べ続ける
  • 甘い飲み物と菓子を一緒に取る

習慣がある場合は見直しましょう。

量を決め、小皿へ取り分ける方法も有効です。


運動は何をすればよいですか?

まずは歩く時間を増やしましょう

運動すると、筋肉がブドウ糖を利用し、インスリンも効きやすくなります。継続的な運動は、血糖だけでなく血圧や脂質の改善にも役立ちます。

一般的には、

  • 中等度の有酸素運動を週150分程度
  • 週3回以上
  • 筋力トレーニングを週2~3回

行うことが勧められています。

ただし、運動習慣がない方が、最初からこの量を達成する必要はありません。

まずは、

  • 食後に10~15分歩く
  • 買い物へ歩いて行く
  • エレベーターではなく階段を使う
  • 座っている時間を30~60分ごとに中断する
  • 自宅でスクワットやかかと上げを行う

などから始めましょう。

食後の運動は、筋肉でブドウ糖が利用されるため、食後血糖の改善に役立ちます。

胸痛、強い息切れ、足の痛み、重い関節疾患などがある方は、運動を始める前に医師へ相談してください。


体重は、どのくらい減らせばよいですか?

肥満がある方では、大幅な減量をいきなり目指す必要はありません。

現在の体重の数%を減らすだけでも、血糖値やインスリンの効き方が改善することがあります。

大切なのは、

  • 短期間で急激に落とす
  • 食べない方法で減らす
  • 一時的に頑張る

ことではなく、無理なく維持できる体重を目指すことです。

一方、痩せている方や高齢者では、安易な減量によって筋肉量が減ると、かえって健康を損なうことがあります。

体重目標は、年齢、筋肉量、持病などを踏まえて個別に決めます。


睡眠と血糖は関係がありますか?

睡眠不足や睡眠の質の低下は、血糖に影響します

睡眠不足が続くと、食欲や代謝に関係するホルモンのバランスが変化し、インスリンが効きにくくなる可能性があります。

特に注意したいのが、睡眠時無呼吸症候群です。

睡眠中に呼吸が繰り返し止まると、酸素不足や交感神経の興奮が起こり、血圧や糖代謝へ影響することがあります。睡眠時無呼吸は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病と関連します。

次のような症状がある方は、一度ご相談ください。

  • 大きないびき
  • 睡眠中の呼吸停止を指摘された
  • 朝の頭痛
  • 日中の強い眠気
  • 十分寝ても疲れが取れない
  • 夜間に何度も尿へ行く
  • 高血圧が下がりにくい

ただし、睡眠時無呼吸を治療すれば必ず血糖値が正常になるわけではありません。食事、運動、体重、必要な薬物治療を含めて総合的に管理します。


糖尿病予備軍では、薬を飲むのでしょうか?

多くの場合、まずは食事、運動、体重管理などの生活習慣改善が中心になります。

ただし、

  • 血糖値が糖尿病型に近い
  • 肥満が強い
  • 高血圧や脂質異常症を合併している
  • 妊娠糖尿病の既往がある
  • 生活改善だけでは数値が悪化する
  • ほかの病気や薬が血糖へ影響している

場合などは、より積極的な対応が必要です。

「予備軍だから薬は絶対に不要」と一律に決めるのではなく、検査結果や全身のリスクを見て判断します。

健康食品やサプリメントだけで血糖を下げようとするのは避けましょう。ほかの薬との相互作用や、肝臓・腎臓への影響が生じることもあります。


どのくらいの間隔で検査すればよいですか?

検査の間隔は、数値やリスクによって異なります。

一般には、

  • 正常高値か境界型か
  • HbA1cが上昇傾向か
  • 肥満や家族歴があるか
  • 高血圧・脂質異常症があるか
  • 生活改善を始めた直後か

などを踏まえて、数か月後から1年以内を目安に再検査します。

HbA1cは直近1~2か月程度の血糖状態を反映するため、生活改善の効果を確認する場合には、数か月後に再検査することがあります。

受診せず、毎年の健診だけでよい方もいれば、3~6か月ごとの確認が適する方もいます。医師と相談して検査時期を決めましょう。


森川内科クリニックにできること

当院は、JR塚口駅から徒歩3分、尼崎市上坂部・ミリオンタウン塚口2階にある内科・消化器内科クリニックです。

健診結果を正しく評価します

「血糖値が高め」と書かれていても、その意味は数値や検査条件によって異なります。

当院では、

  • 空腹時血糖
  • HbA1c
  • 尿糖
  • 体重・腹囲
  • 血圧
  • 脂質
  • 肝機能
  • 腎機能

などを合わせて確認します。

必要に応じて再検査や75g経口ブドウ糖負荷試験などを検討し、現在の状態を分かりやすくご説明します。

続けられる生活改善を一緒に考えます

糖尿病予備軍の対策は、厳しい禁止を並べることではありません。

  • 甘い飲み物を減らす
  • 夜食を見直す
  • 食後に歩く
  • 体重を記録する
  • 睡眠時間を整える

など、ご本人の生活に合わせて、実行できる目標を一緒に決めます。

短期間だけ完璧に行うより、小さな改善を継続することが大切です。

関連する生活習慣病もまとめて管理します

糖尿病予備軍の方では、

  • 高血圧
  • 脂質異常症
  • 肥満
  • 脂肪肝
  • 睡眠時無呼吸症候群

などが重なっていることがあります。

当院では、血糖だけでなく、心臓や血管のリスクを含めて総合的に確認します。

睡眠時無呼吸が疑われる方には、自宅で行う簡易検査や、必要に応じてCPAP療法の管理にも対応しています。

理事長は企業の産業医も務めており、忙しい働く世代の食事、運動、睡眠、通院の続け方についてもご相談いただけます。


まとめ|「予備軍」と分かった今が、最も始めやすいタイミングです

糖尿病予備軍について、大切な点をまとめます。

1.予備軍は、血糖値が正常より高いものの、糖尿病の診断基準には達していない状態です。

HbA1cだけで境界型と決めるのではなく、空腹時血糖や必要な追加検査を合わせて判断します。

2.自覚症状がなくても、放置すると糖尿病へ進行する可能性があります。

予備軍の段階から、血管への負担が始まっている場合もあります。

3.生活習慣の改善によって、糖尿病への進行を防げる可能性があります。

食事、運動、体重、睡眠を、無理のない範囲で見直しましょう。

4.最初から完璧を目指す必要はありません。

甘い飲み物を水へ替える、食後に10分歩くなど、一つの行動から始めてください。

5.口渇、多尿、体重減少、強い倦怠感がある場合は、予備軍と思い込まず早めに受診してください。

すでに血糖値が大きく上昇している可能性があります。

6.血糖だけでなく、血圧、脂質、体重、睡眠も合わせて確認することが大切です。

糖尿病予備軍は、怖がるだけの状態ではありません。

今なら、生活を大きく変えなくても、小さな改善を積み重ねることで将来のリスクを減らせる可能性があります。

健診結果をしまい込まず、まずは現在の状態を正しく確認するところから始めましょう。


ご相談・ご予約

医療法人 煌仁会 森川内科クリニック
理事長 森川髙司
内科・消化器内科

兵庫県尼崎市上坂部
JR塚口駅から徒歩3分
ミリオンタウン塚口2階

Web予約

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お電話でのご予約・お問い合わせ

06-6439-7337

平日は19時まで、土曜日も診療しています。

健診結果をお持ちいただければ、血糖値やHbA1cの意味、必要な再検査、生活改善の進め方を一緒に確認します。

糖尿病予備軍についてよくあるご質問

Q1.糖尿病予備軍とは、どのような状態ですか?

A.血糖値が正常より高いものの、糖尿病と診断される基準には達していない状態です。一般に「糖尿病予備群」と呼ばれ、検査上は「境界型」などに分類されます。

境界型の目安は、HbA1cが6.5%未満で、次のいずれかに該当する場合です。

  • 空腹時血糖:110~125mg/dL
  • 75g経口ブドウ糖負荷試験の2時間値:140~199mg/dL

一方、空腹時血糖100~109mg/dLは「正常高値」とされ、正常範囲に含まれるものの、将来の糖尿病リスクに注意が必要な範囲です。

HbA1cが5.6~6.4%の場合も、糖尿病のリスクを考える重要な数値ですが、HbA1cだけで境界型と確定するわけではありません。 空腹時血糖や、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験などを組み合わせて、医師が総合的に判断します。

糖尿病予備群では、ほとんど自覚症状がないことも大きな特徴です。


Q2.糖尿病予備軍を放置すると危険ですか?

A.そのままにすると糖尿病へ進行する可能性があるため、放置はおすすめできません。

境界型は、正常な方に比べて糖尿病型へ悪化するリスクが高く、食事、運動、肥満の是正などの生活指導と、定期的な検査が勧められています。

また、予備群の段階でも、心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高まる可能性があります。血糖だけでなく、高血圧、脂質異常症、肥満、喫煙なども合わせて管理することが大切です。

一方で、予備軍は糖尿病になることが決まった状態ではありません。生活習慣を見直すことで、血糖値が正常域へ戻ったり、糖尿病への進行を抑えたりできる可能性があります。


Q3.糖尿病予備軍は、生活改善で治りますか?

A.生活改善によって血糖値が正常域へ戻る場合はあります。ただし、必ず改善するとは限らないため、定期的な検査が必要です。

予備軍の段階では、多くの場合、食事、運動、体重管理などの生活習慣改善が対策の中心になります。

具体的には、

  • 甘い飲み物を水や無糖のお茶へ替える
  • 食べ過ぎや夜食を減らす
  • 食後に歩く
  • 座っている時間を減らす
  • 肥満がある場合は無理のない減量を目指す
  • 睡眠時間と睡眠の質を整える

といった取り組みが役立ちます。

国内外の研究では、食事や運動を中心とした生活習慣への介入によって、体重や血糖状態が改善し、2型糖尿病の発症を抑えられることが示されています。

数値が改善しても、体質や加齢などの影響は残るため、「治ったからもう検査は不要」とは考えず、定期的に血糖値やHbA1cを確認しましょう。


Q4.何を食べればよいですか?厳しい制限は必要ですか?

A.特定の食品を禁止したり、糖質を完全に抜いたりする必要はありません。食事の量・内容・時間を整え、続けられる方法を選ぶことが大切です。

まず取り組みやすい工夫は次のとおりです。

  • 甘い飲み物を水や無糖のお茶へ替える
  • 朝食を抜かず、まとめ食いを避ける
  • 夜遅い食事や就寝前の間食を減らす
  • 野菜、きのこ、海藻などを取り入れる
  • 肉、魚、卵、大豆製品などの主菜も組み合わせる
  • よく噛み、ゆっくり食べる
  • 腹八分目を意識する

日本糖尿病学会は、野菜、次におかず、最後にご飯などの炭水化物を食べ、ゆっくりよく噛む方法を、食後血糖の上昇を抑える工夫として紹介しています。

ただし、食べる順番だけで食べ過ぎを帳消しにはできません。総量や栄養バランスも重要です。

糖尿病だから絶対に食べてはいけない食品があるわけではなく、規則正しく、バランスよく、腹八分目を心がけることが基本です。

持病、年齢、体重、生活状況によって適した食事は異なるため、具体的な内容は医師や管理栄養士へご相談ください。


Q5.どのような人が糖尿病予備軍になりやすいですか?

A.体質に加えて、肥満、運動不足、食生活、加齢、ほかの生活習慣病など、複数の要因が関係します。

特に注意したいのは、次のような方です。

  • 健診で血糖値やHbA1cが高めと言われた
  • 以前より体重や腹囲が増えた
  • 家族に2型糖尿病の方がいる
  • 日常的に運動する機会が少ない
  • 食べ過ぎ、間食、夜食が多い
  • 甘い飲み物をよく飲む
  • 高血圧や脂質異常症がある
  • 脂肪肝を指摘された
  • 妊娠糖尿病になったことがある
  • 大きないびきや日中の眠気がある
  • 年齢とともに血糖値が上昇してきた

糖尿病の発症には、体質だけでなく、食べ過ぎ、運動不足、睡眠不足、ストレス、加齢などが関係します。

ただし、太っていない方や生活に気をつけている方でも、インスリンを分泌する力が低下して血糖値が高くなることがあります。

チェック項目だけでは診断できないため、健診で指摘された場合は、結果を持参して内科へご相談ください。


Q6.糖尿病予備軍と言われたら、何科を受診すればよいですか?

A.まずは内科、糖尿病内科、または代謝内科へご相談ください。

受診時には、健康診断の結果をお持ちください。

医療機関では、

  • 空腹時血糖
  • HbA1c
  • 尿糖
  • 体重・腹囲
  • 血圧
  • コレステロール・中性脂肪
  • 肝機能・腎機能

などを確認します。

必要に応じて再検査や75g経口ブドウ糖負荷試験を行い、

  • 正常高値なのか
  • 境界型なのか
  • すでに糖尿病型なのか
  • 食後高血糖が隠れていないか

を判断します。

糖尿病予備軍の方は、高血圧、脂質異常症、肥満、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などを併せ持つこともあるため、血糖だけでなく全身のリスクをまとめて確認できる内科での相談が適しています。

口の渇き、尿量の増加、原因不明の体重減少、強い倦怠感などがある場合は、「予備軍だから」と思い込まず、早めに受診してください。すでに血糖値が大きく上昇している可能性があります。


執筆者プロフィール
森川 髙司
医療法人煌仁会 森川内科クリニック 理事長
専門:内科・消化器内科・呼吸器内科
地域の皆様の健康寿命延伸のため、生活習慣病の予防・改善指導に力を入れています。

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