胃腸炎の水分補給、正しくできていますか?吐き気があっても脱水を防ぐ飲み方を内科医が解説

胃腸炎で特に注意したいのは「脱水」です

こんにちは。尼崎市の森川内科クリニック、理事長の森川髙司です。

急な吐き気や嘔吐、下痢に見舞われる胃腸炎は、とてもつらいものです。

「水分を取らなければいけないのは分かっているけれど、飲むと吐いてしまう」

「何を、どのくらい飲めばよいのか分からない」

と困った経験がある方も多いのではないでしょうか。

感染性胃腸炎の多くは、適切に休養しながら水分を補給することで回復に向かいます。一方、嘔吐や下痢が続くと、水分だけでなくナトリウムやカリウムなどの電解質も失われ、脱水が進むことがあります。

特に、

  • 高齢者
  • 乳幼児
  • 妊娠中の方
  • 糖尿病や腎臓病などの持病がある方
  • 利尿薬などを服用している方

は、脱水の影響を受けやすいため注意が必要です。

胃腸炎を安全に乗り切るために大切なのは、無理に大量の水を飲むことではありません。

吐き気の程度に合わせて、適切な飲み物を少量ずつ繰り返し取ることです。

この記事では、胃腸炎のときに選びたい飲み物、吐いた後の水分補給の手順、脱水のサイン、受診すべき症状について解説します。


結論|胃腸炎の水分補給は「経口補水液を少量ずつ」が基本です

最初に、大切なポイントを整理します。

確認したいこと基本的な対応
何を飲むか嘔吐や下痢で脱水が心配なときは経口補水液が適しています
どのように飲むか一度に大量に飲まず、5mL程度から少しずつ始めます
吐いた直後5~10分程度休み、吐き気が落ち着いたら少量から再開します
また吐いた場合再び短時間休み、量を減らしてゆっくり再開します
食事はいつからか水分が取れ、食欲が戻ってきたら無理のない範囲で再開します
水分を取れない場合脱水が進む前に医療機関へ相談します

水分補給では、1回に飲む量よりも、少量を体内にとどめながら積み重ねることが重要です。


なぜ一度にたくさん飲むと吐きやすいのでしょうか?

吐き気が強いときにコップ1杯の水を一気に飲むと、胃が急に膨らみ、再び嘔吐を誘発することがあります。

吐いた後は喉が渇くため、勢いよく飲みたくなるかもしれません。しかし、一度に飲む量を増やすほど、必ず水分を吸収できるわけではありません。

まずはスプーン1杯程度を飲み、吐かずに保てることを確認しながら、少しずつ量を増やしていきます。

胃腸炎の水分補給では、

「一気に取り戻す」のではなく、「少しずつ補い続ける」

という考え方が大切です。


胃腸炎のときは何を飲めばよいですか?

脱水が心配なときは経口補水液が適しています

嘔吐や下痢では、水分とともに塩分やミネラルも失われます。

経口補水液は、水分、ナトリウムなどの電解質、糖質を、腸から吸収されやすい濃度で配合した飲料です。軽度から中等度の脱水状態における水分・電解質の補給に適しています。

少量のブドウ糖とナトリウムを一緒に取ることで、腸から水分が吸収されやすくなります。

ただし、経口補水液は一般的な清涼飲料水ではなく、脱水時の補水を目的としたものです。日常の水分補給として習慣的に大量に飲むものではありません。

飲み物の選び方

経口補水液

嘔吐や下痢があり、脱水が心配なときの第一選択です。

製品に記載された方法で使用し、粉末タイプは指定された量の水で正確に溶かしてください。自己判断で濃くしたり薄くしたりすると、適切な濃度になりません。

水やカフェインの少ないお茶

症状が軽く、食事もある程度取れている場合や、経口補水液が手元にない場合の水分補給に利用できます。

ただし、嘔吐や水のような下痢を繰り返している場合は、電解質を含む経口補水液のほうが適しています。

スープや味噌汁

吐き気が落ち着き、食事を再開できる段階では、水分や塩分を補う方法の一つになります。

ただし、濃い味付けや脂肪分の多いスープは胃腸への負担になることがあります。薄味で、油の少ないものから試しましょう。


スポーツドリンクでもよいですか?

スポーツドリンクと経口補水液は、目的や成分が異なります。

スポーツドリンクは、運動時の水分補給を想定したものが多く、経口補水液と比べて糖分が多く、ナトリウム濃度が低い傾向があります。

胃腸炎で嘔吐や下痢が続き、脱水が疑われる場合は、スポーツドリンクより経口補水液が適しています。

経口補水液がすぐに手に入らず、ほかに飲めるものがない場合に、少量ずつスポーツドリンクを取ることまで否定する必要はありません。しかし、糖分の多い飲み物を大量に取ると、浸透圧の影響で下痢を悪化させることがあります。

糖尿病がある方は、糖分を含む飲料の取り方についても注意が必要です。


胃腸炎のときに控えたい飲み物

糖分の多いジュースや清涼飲料水

果汁飲料、炭酸飲料、甘い清涼飲料などは糖分が多く、下痢がひどいときの水分補給には適さない場合があります。

飲めるものが限られている状況では少量を試すこともありますが、大量に飲むことは避けましょう。

アルコール

アルコールは胃腸を刺激し、判断力の低下や脱水を悪化させる可能性があります。症状が回復するまでは控えてください。

カフェインの多い飲み物

コーヒーやエナジードリンクなどは、吐き気や腹部症状を悪化させることがあります。

少量のカフェインが直ちに強い脱水を起こすわけではありませんが、胃腸炎時の主な水分補給として積極的に選ぶ必要はありません。

炭酸飲料

炭酸によって胃が膨らみ、吐き気や腹部膨満感が強くなることがあります。吐き気がある間は避けたほうが飲みやすいでしょう。


冷たい飲み物は避けるべきですか?

冷たい飲み物が胃腸炎を悪化させると一律に決まっているわけではありません。

常温のほうが飲みやすい方もいれば、冷やした経口補水液のほうが吐き気を感じにくく、少量ずつ飲める方もいます。

温度にこだわるよりも、

  • 本人が飲みやすいこと
  • 一度に大量に飲まないこと
  • 吐かずに少量を保てること

を優先してください。

極端に熱い飲み物は胃を刺激したり、やけどを起こしたりするため避けましょう。


吐き気があるときの水分補給|具体的な手順

STEP1.吐いた直後は5~10分程度休む

嘔吐した直後にすぐ大量の水分を飲むと、再び吐きやすくなります。

まずは口の中を軽くすすぎ、5~10分程度、胃を休ませましょう。

ただし、長時間まったく飲まずに我慢する必要はありません。吐き気が少し落ち着いたら、少量から再開します。

STEP2.小さじ1杯程度から始める

経口補水液を5mL程度、小さじ1杯ほど飲みます。

コップから飲むと一度に多く入りやすい方は、スプーン、ストロー、小さな容器などを使うと調整しやすくなります。

STEP3.数分おきに繰り返す

最初は5分程度おきに少量ずつ試します。

成人の場合も、強い吐き気がある間は、ひと口を小さくすることが大切です。

吐かずに飲めていれば、少しずつ1回量を増やしたり、飲む間隔を調整したりします。少量を頻回に与える方法は、嘔吐を伴う胃腸炎の経口補水で広く用いられています。

STEP4.再び吐いたら、短時間休んでやり直す

途中で吐いてしまっても、「口からの補給は絶対に無理」とは限りません。

再び5~10分程度休み、先ほどよりも少ない量からゆっくり再開します。

ただし、少量ずつ試しても繰り返し吐く場合は、口からの水分補給だけでは追いつかない可能性があります。無理を続けず、医療機関へ相談してください。


どのくらい飲めばよいですか?

必要な水分量は、

  • 年齢
  • 体格
  • 嘔吐や下痢の回数
  • 発熱や発汗の程度
  • 食事から取れている水分
  • 心臓や腎臓の状態

によって異なります。

そのため、すべての方に同じ量を勧めることはできません。

成人では、尿が極端に減らず、口の渇きや立ちくらみが改善するよう、失った分を少しずつ補っていきます。

一度に目標量を飲もうとせず、吐かずに取れる量を積み重ねてください。

心不全、腎不全、肝硬変などで水分や塩分の制限を指示されている方は、経口補水液を自己判断で大量に飲まず、早めに主治医や医療機関へ相談してください。経口補水液にはナトリウムやカリウムが含まれるため、病状によっては注意が必要です。


下痢だけで吐き気がない場合はどうすればよいですか?

吐き気や嘔吐がなければ、最初から少量ずつに厳しく制限する必要はありません。

水分をこまめに取り、下痢で失った分を補いましょう。

ただし、一度に大量の甘い飲料を飲むと、下痢が悪化することがあります。水分の喪失が多い場合は経口補水液を利用し、尿の量や全身状態も確認してください。

下痢が続いていても、自己判断で下痢止めを使用しないほうがよい場合があります。血便、高熱、強い腹痛があるときや、感染性の下痢が疑われるときは、服用前に医師や薬剤師へ相談してください。厚生労働省も、ロタウイルス感染症では止瀉薬が回復を遅らせることがあると説明しています。


食事はいつから再開すればよいですか?

水分が取れて食欲が戻ったら、無理のない範囲で再開します

胃腸炎だからといって、長時間絶食し続ける必要はありません。

水分を吐かずに取れるようになり、食欲が少し戻ってきたら、食べられるものを少量から再開します。経口補水と並行して、年齢に応じた通常の栄養を続けることが推奨されています。

例えば、

  • おかゆ
  • やわらかく煮たうどん
  • ご飯
  • 食パン
  • バナナ
  • 豆腐
  • 脂肪の少ないスープ

など、本人が食べやすいものから始めます。

「おかゆだけ」「うどんだけ」に長く限定する必要はありません。体調に合わせて、少しずつ普段の食事へ戻していきましょう。

脂肪分や刺激の強いものは控えめに

吐き気や下痢が強い間は、

  • 揚げ物
  • 脂身の多い肉
  • 香辛料の多い料理
  • 大量の菓子類
  • アルコール

などは症状を悪化させることがあります。

無理に食べる必要はありませんが、水分だけは少しずつ継続してください。


牛乳や乳製品は避けたほうがよいですか?

胃腸炎の後は、一時的に乳糖を消化しにくくなり、牛乳を飲むと下痢や腹部膨満感が強くなる方がいます。

その場合は、症状が落ち着くまで牛乳を控えめにするのがよいでしょう。

一方、乳製品をすべての方が一律に禁止する必要はありません。

少量を取っても症状が悪化しなければ、ヨーグルトなどを食べられることもあります。ご自身の症状に合わせて判断してください。


脱水を疑うサイン

次のような症状がある場合は、脱水が進んでいる可能性があります。

  • 尿の回数や量が明らかに減った
  • 尿の色が濃い
  • 口や舌が乾いている
  • 強い喉の渇きがある
  • 立ちくらみやふらつきがある
  • 強いだるさがある
  • 頭がぼんやりする
  • 脈が速い
  • 目が落ちくぼんで見える
  • 水分を飲んでも繰り返し吐く

尿が出ているかどうかは重要な目安ですが、「半日」という時間だけで一律に判断することはできません。

普段より明らかに尿が少ない、数時間にわたってほとんど出ない、濃い尿が少量しか出ない場合は、ほかの症状と合わせて早めに相談してください。NHSも、濃い尿や尿量の減少、めまい、口の乾燥などを脱水の徴候として挙げています。


その日のうちに医療機関へ相談したい症状

次のような状態では、口からの水分補給だけで対応できない場合があります。

  • 少量の水分も吐いてしまう
  • 嘔吐を繰り返している
  • 下痢の回数が非常に多い
  • 尿量が明らかに減っている
  • 立つと強くふらつく
  • 高熱が続く
  • 強い腹痛がある
  • 血便や黒い便が出た
  • 症状が改善せず長引いている
  • 高齢者や持病のある方で、食事や水分が取れない
  • 妊娠中で嘔吐が続いている

「飲めるようになるまで我慢しよう」と考えず、脱水が進む前にご相談ください。


ためらわず救急要請を検討する症状

次のような症状がある場合は、通常の外来受診を待たず、119番への連絡を検討してください。

  • 呼びかけへの反応が鈍い
  • 意識がもうろうとしている
  • 自力で立てない
  • 失神した
  • けいれんを起こした
  • 呼吸が苦しい
  • 胸に強い痛みがある
  • 突然の激しい腹痛がある
  • 吐血した
  • 大量の血便が出た
  • 水分を全く飲めず、急速に衰弱している

意識の低下やけいれんは、重度の脱水や電解質異常などでも起こる可能性があるため、速やかな医療対応が必要です。


高齢者は脱水のサインが分かりにくいことがあります

高齢になると、喉の渇きを感じにくくなったり、体調不良をうまく伝えられなかったりすることがあります。

本人が「喉は渇いていない」と言っていても、

  • 食事や水分の量が減っている
  • トイレへ行く回数が減った
  • いつもより眠っている
  • 反応が鈍い
  • ふらつきがある
  • 急に元気がなくなった

といった変化がないか確認しましょう。

心臓病や腎臓病がある方では、脱水を避ける必要がある一方、水分を取りすぎると病状に影響することもあります。普段の指示量が分からない場合は、早めに主治医へ相談してください。


お子さんの胃腸炎について

乳幼児は体が小さく、水分の予備が少ないため、嘔吐や下痢によって脱水が早く進むことがあります。

特に、

  • おむつが長時間濡れない
  • 泣いても涙が出ない
  • 口の中が乾いている
  • 目が落ちくぼんでいる
  • ぐったりしている
  • 哺乳できない
  • 何度も吐いている

場合は、早めに小児科へ相談してください。

本記事は主に成人の胃腸炎を想定しています。乳幼児の補水量や受診の判断は年齢や体重によって異なるため、かかりつけの小児科へご相談ください。


点滴が必要になるのはどのようなときですか?

軽度から中等度の脱水では、経口補水液を使って口から水分と電解質を補う方法が基本です。

しかし、

  • 吐き気が強く、口から全く取れない
  • 少量ずつ試しても繰り返し吐く
  • 意識状態が悪い
  • 脱水が強い
  • 腎機能や電解質の異常が疑われる

場合は、点滴による治療が必要になることがあります。脱水が重い場合には、医療機関で点滴などの治療が必要です。

点滴は「水分を飲むより早く治るから希望すれば行う」というものではありません。

診察で脱水の程度、血圧、脈拍、意識状態、持病などを確認し、必要性を判断します。


胃腸炎に見えて、別の病気が隠れていることもあります

吐き気、嘔吐、下痢、腹痛があっても、必ずしも感染性胃腸炎とは限りません。

例えば、

  • 虫垂炎
  • 腸閉塞
  • 胆のう炎
  • 膵炎
  • 消化管出血
  • 心筋梗塞
  • 糖尿病性ケトアシドーシス
  • 薬の副作用

などでも似た症状が現れることがあります。

特に、

  • 痛む場所がはっきりしている
  • 時間とともに腹痛が強くなる
  • お腹が張り、便やガスが出ない
  • 血便や黒い便がある
  • 胸痛や冷や汗を伴う

場合は、単なる胃腸炎と決めつけず受診してください。


家族内感染を防ぐために

ノロウイルスなどによる感染性胃腸炎は、ご家庭内で広がることがあります。

予防の基本は、石けんと流水による手洗いです。

特に、

  • トイレの後
  • 嘔吐物や便を処理した後
  • 調理の前
  • 食事の前

には丁寧に手を洗ってください。

嘔吐物を処理するときは、使い捨ての手袋やマスクを着用し、周囲へ広げないよう静かに拭き取ります。

症状がある方は、家族の食事を調理することをできるだけ避け、タオルの共用もしないようにしましょう。


森川内科クリニックの胃腸炎診療について

当院は、JR塚口駅から徒歩3分、尼崎市上坂部・ミリオンタウン塚口2階にある内科・消化器内科クリニックです。

胃腸炎が疑われる方に対して、当院では次の点を大切にしています。

脱水の程度と全身状態を確認します

診察では、

  • 嘔吐や下痢の回数
  • 水分を取れているか
  • 尿が出ているか
  • 発熱の有無
  • 血圧や脈拍
  • 持病や服用中のお薬

などを確認します。

必要に応じて検査を行い、吐き気などの症状を和らげる治療をご提案します。口から水分を取れず、脱水が進んでいる場合は、診察結果に応じて点滴を検討します。

消化器内科として原因を見極めます

胃腸炎に似た症状の背景に、別の消化器疾患が隠れていることもあります。

強い腹痛、血便、長引く下痢、繰り返す嘔吐などがある場合は、症状の経過を丁寧に伺い、必要な検査や治療を検討します。

当院で対応が難しい重症例や専門的な検査が必要な場合は、適切な医療機関へご紹介します。

来院前にご連絡ください

嘔吐や下痢は感染性胃腸炎による可能性があり、感染対策のため、一般の患者さまと受診時間や診療場所を分ける場合があります。

ご来院前にお電話で症状をお伝えいただき、受診方法をご確認ください。

なお、意識障害、呼吸困難、けいれん、大量の吐血・血便などがある場合は、当院への連絡や来院を待たず119番へ連絡してください。


まとめ|焦らず、少量ずつ補うことが脱水予防の基本です

胃腸炎の水分補給で大切なことをまとめます。

1.嘔吐や下痢による脱水には、経口補水液が適しています。

水分だけでなく、失われた電解質も補うことができます。

2.吐いた後は5~10分程度休み、5mLほどの少量から再開します。

一度に大量に飲まず、数分おきに繰り返しましょう。

3.再び吐いたら、短時間休み、さらに少ない量からやり直します。

少量でも吐き続ける場合は、無理をせず医療機関へ相談してください。

4.水分が取れ、食欲が戻ったら、無理のない範囲で食事を再開します。

長時間の絶食や、特定の食品だけに限定する必要はありません。

5.尿量の減少、強いふらつき、意識の変化、水分を全く取れない状態は危険なサインです。

脱水が進む前に受診しましょう。

胃腸炎のときは、「たくさん飲まなければ」と焦る必要はありません。

少量ずつ、吐かずに体内へ届けることが、脱水を防ぐための最も重要なポイントです。

水分を取れずつらいとき、尿が少ないとき、腹痛や血便があるときは、我慢せずご相談ください。


執筆者プロフィール
森川 髙司
医療法人煌仁会 森川内科クリニック 理事長
専門:内科・消化器内科・呼吸器内科
地域の皆様の健康寿命延伸のため、生活習慣病の予防・改善指導に力を入れています。

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